インナーマッスルを使う練習

肥田式にヒントを得まして、「インナーマッスルを使う」ということを試しています。

 

デスクワーク中に、無性に肩が凝り、背中が痛み、腰が疲れ、息苦しくなる。

これはつまり「アウターマッスルで姿勢を保持しようとしている」ということに原因があると気づいたのです。

腹直筋を収縮し、広背筋を収縮し、僧帽筋を収縮し、からだが前に倒れないように保持している。

これは疲れて当然ですね。

 

そこで方式を変えまして、「大腰筋の緊張だけで姿勢を保持する」ということを試しています。

どうするかというと、椅子に座っているときに、足の裏に注目するのです。

通常は足の裏をべたっと床につけていると思います。

そこで、この足の裏をすこし持ち上げて、床から1mmだけ離す。

まあ1mmというのはあくまで目安で、気持ちとしては、足の裏と床の間に1枚紙をはさんでいる、という感じです。

 

そうすると、不思議や不思議!

骨盤と腰が、自然と立ってくるのであります。

これはどういうことかというと、膝を少しだけ持ち上げようという意識によって大腰筋が収縮したのです。

大腰筋は腰椎のすべてと骨盤、大腿骨の付け根に結点があります。

大腰筋を収縮するということは、腰椎と骨盤を大腿骨に近づけるということなのです。

 

骨盤と腰が立ってくると、その上に「乗っかる」ことができます。

するともう、広背筋や僧帽筋を一切つかわなくても、姿勢が保持できてしまうのです。

また一般的には、腹横筋や腹直筋を姿勢の維持に使うという説がありますが、これは一歩間違えると、呼吸困難になります。

呼吸はおなかが自由に動かないと、やりにくいものです。

なのに腹直筋や腹横筋を緊張させてしまうと、腹腔の拡大縮小が不自由になります。

そこで、大腰筋だけを利用して骨盤と腰椎を屹立させれば、腹直筋や腹横筋は弛緩状態になるので、とてもイキが楽になります。

 

大腰筋にすべてを任せてしまうと、

・広背筋
・僧帽筋
・腹横筋
・腹直筋
・外腹斜筋

のすべての筋肉が、弛緩状態でいることができるのでした。

大腰筋で腰をぐっと入れれば、胴体はホネに乗ることができる。

言い方を変えれば、ひじょうにダラダラしているカラダの使い方なんだけど、腰だけが謎にピシっと立っている。

 

だから、ラクです。

アタマも、イキも楽。

そのかわり……お腹の奥のほうが疲れる。とても疲れます。

この、お腹のずっと奥に感じる収縮感が、大腰筋の収縮なんだと思います。

普段、いかに大腰筋を使っていないか。

如実にわかりますね。

 

さて、よい副作用があります。

「足の裏を床から1mmだけ離す」

この体制を続けていると、とてもふしぎなことで、足先があまり冷えないのです。

デスクワークをしていると、どうも足が冷えてかなわん、というのがありました。

これは夏でも例外ではありません。

冷え性なんだ、オトコなのに冷え性なんだ、そう思っていました。

実際には、冷え性というよりも、姿勢の無理によって全体が前傾し、フトモモなどに圧がかかり、単純に血行が悪くなっていただけなのかもと思ったりします。

すこしフトモモを持ち上げるだけで、足がそんなに冷えない。

 

まあ考えてみれば、血行を阻害する条件が、一切ないのです。

からだの奥のほうにある、大腰筋だけが緊張している。

上半身のアウターマッスルはほとんど筋緊張をしていないですし、お尻も太ももも、まったく緊張する必要がありません。

腹筋が自由なので、呼吸もラク。

弛緩状態なので、血液も自由自在に流れますよね。

 

ただし、1点だけ、大いなる問題があります。

 

しんどい。

 

どこが、という説明が難しいのですが、とにかく下腹の奥の方。

たぶん、弱っている大腰筋が、音を上げているんでしょうね。

これは急に連続するのではなく、徐々に時間を増やしていったほうがよさそうです。

 

これにヒントを得まして、「歩く」ことにも応用してみました。

ふつうはからだを前傾させて重心を前に移動し、足を前に出してあるきはじめます。

このとき、大臀筋やハムストリングスなどを使って初動が行われます。

これを、そうではなく、前進するときに大腰筋を使って脚を前に出す。

でまた反対の脚を、大腰筋を使って前に出す。

そうすると、からだが必要以上に前のめりにならず、またからだの捻り運動もあまり発生しないので、スーーーー、という感じで前進できるのです。

アレだ、能楽師みたいな、あるきかた。

これもデスクワークと同じく、上半身の筋肉をほぼ一切使わないので、呼吸などが楽になるのですよね。

おなかが自然に大きくふくらんで、大きくちぢむ。

総体として、ラク。背中も疲れませんし、腹筋も疲れません。使ってないんだもの。

坂を登るときでも、大腿四頭筋と大臀筋、ハムストリングスを同時に使えるので、通常よりも楽に坂が登れます。

ていうかむしろ、この歩き方をすると、いかに普段、上半身の筋肉を酷使していたかがわかります。

ただ進むためだけに、大げさに「反動」を使っていたのですね。

 

しかし!

これも1点だけ、大いなる問題があります。

 

しんどい。

 

こういう歩き方、ふだんはしてませんからね。

これもデスクワークのときと全く同様に、下腹の奥のほうがズシーンとしんどいです。

コシ・・・かなあ。

なんかこう、ふだんと全然ちがう疲れ方。

正直「あ。もういやだ」と思った。

いやになって、すぐに帰りました。

これもまた、急にいっぱいやるのではなく、日々少しづつ慣らしていかないといけないのかもしれませんね。

 

インナーマッスルを使って、動く。

あまりこの発想はありませんでした。

よく話には聞きますけどね、具体的にどうするのかは、まったく聞いたことがありませんでした。

 

で、思ったんです。

日本武道のカラダの使い方と、西洋スポーツの体の使い方のちがい。

それはインナーマッスルとアウターマッスルの使用比率の違いなのではないか、と。

これはまだちゃんと調べてませんけど、どうも日本武道というのは、大腰筋とかのインナーマッスルをメイン・パワーとして使っている気がするのです。

そしてアウターマッスルを、サブ・パワーに使用している。

いっぽう西洋スポーツ型は、アウターマッスルをメイン・パワーに使っており、パワーを全面的にそれに依存している。

だから日本武道系では伝統的にあまり筋トレということを言わず、日々「型」の鍛錬を行う傾向が強く、いっぽう西洋スポーツでは、アウターマッスルを鎧のごとく強化していく傾向があるように思います。

 

日本武道系では、わりとひょろっひょろの老人や女性でも、かなりのパワーを発揮することがあります。

これはもしかすると、強化されたインナーマッスルが、外から見えないだけなのではないか。

じつはインナーマッスルがマッチョという可能性がある。

インナーマッスルは内臓筋にかなり近いらしいので、いったん強くなると、なかなか弱くならないんだそうです。

しかしアウターマッスルは、2週間もサボれば、一気に弱くなっていきます。

 

ほんとうのおしゃれさんは、上着よりも下着にこだわる、ということを聞いたことがあります。

人が見ていないところにどれだけ気を使えるか、それが大事なのだ、と。

同じように、ほんとうの体育とは、人から見えない内側の筋肉を強大化することなのかもしれませんね。

見栄えの良い細マッチョなどと言っているうちは、まだまだホンモノではない。

みたいな。

 

しばらく、インナーマッスルの鍛錬について、考えてみようと思います。

これが器用に使えるようになったら、生活がすいぶんラクになると思うんですよね。

たかが姿勢の維持に、2週間サボったら消えてしまうような外側の筋肉を使うなんて、ちょっとバカくさい。

それよりも、基本的に衰えない筋肉をうまく使うほうが、ずっとエコで合理的のような気がしますね。

 

 

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