ちからを抜くと、ばかになる。

ぼくはたいへん、せっかちです。

この春うららの良い季節、散歩に行ったとします。

のんびりとさくらのはなでも眺めながら、後ろ手に手を組んだりして、のんびりまったりと散歩を愉しめば良いのです。

しかしぼくは、そうならない。

徐々に、徐々に、歩くスピードが速くなっていく。

サササササ、タタタタタタ、そんな感じで、速度が増していきます。

もちろん、なんの用事もないのです。

限定販売のタコヤキを買いに行くわけでもなく、娘の忘れ物を届けにいくのでもありません。

目的は、目的のない散歩。

なのにぼくは、いそいで歩く。

しまいには、ほぼ走っているぐらいの速さになる。

 

この「せっかちさん」のせいで、ぼくはスーパーが大嫌いです。

レジが大嫌い。

のそのそうごく、かたつむりみたいなおばさんがきらい。

むだなおしゃべりをする、ハトみたいなおばさんもきらい。

はよせえや!

ササっと買って、ササっと出て行けや! コラ!

そんなことを思う。

 

家の中でも、トイレに行く、風呂に入る、掃除をする、模様替えをする、仕事をする、ご飯をたべる、洗い物をする、もうなんでも、急ぐ。

いそぐいそぐ、いそぎまくる。

「のんびり」の意味が、わからない。

 

スピードを落とそうとすると、いらいらする。

どうすればゆっくり動けるのか、わからない。

そう、ぼくは起きているだいだじゅう「爆走」しています。

 

外出が苦手。

これにはまちがいなく、「せっかちさん」も関係しています。

無意味に急ぐのは、性格が短気だからだろうか。

それとも、パニック障害や自律神経の関係上、とうとうアタマがおかしくなってしまったんだろうか。

そんなことを考えることもあります。

 

そんな難しいことではなかったかもしれません。

「背中のちからを抜く」

これを意識するだけで、ぼくは速度が30%以上落ちました(当社比)。

歩くにしても、ゆっくり歩けるようになった

 

緊張していたのです。

背中が。

 

母親にも、厳しく指導されました。

ガキのころは背中がぐにゃぐにゃで、すぐに背中が丸くなる子供でした。

背中に定規を仕込まれ、ふにゃっとなるたびに、ビンタされました。

 

自律神経がわるいのは、姿勢がわるいからですよ。

ずっと先生にそう言われてきました。

ネットでも本でも、そう言われてきました。

 

ぼくが姿勢をまっすぐするようになったのは、ある「脅し」があったのもあります。

ぼくは柔道をしていて、高校生のころ、腰を痛めたことがありました。

レントゲンでとると、ぼくの脊柱は、ふつうの人よりも大きく曲がる傾向があることがわかりました。

もともとからだがすごく柔らかいタイプだったのです。

で、先生に言われました。

姿勢をまっすぐにするよう訓練せねばならん。このままいくと、一生腰痛が治らないぞ。

 

すべての人と情報が、ぼくに「背筋をまっすぐにせよ!」と命令してきた。

だからぼくはその後、努力の甲斐あって、すばらしくまっすくな姿勢になりました。

整体院でも、姿勢研究所でも、ダンス教室でも、病院でも、ヨガ教室でも、姿勢を褒められる。

 

しかしその後、ぼくは不具合を連発しはじめます。

パニック障害、自律神経失調症、外出恐怖。

常に神経が興奮しつづけるようになってしまったのでした。

 

姿勢は関係ないのでは?

そう思ったりすることもあります。

しかし、背中のちからを思い切って抜いて、猫背をゆるし、亀背をゆるし、「もともとのぼく」に戻ってみる。

そうすると、俄然「のんびりやさん」が復活するのでした。

 

まあ………そんなに………急がなくても………いいのでは………ないのかなあ。

べつに………遅れても………死ぬわけでは………ないし。

怒られるなら………怒られれば………いいとおもうよ。

 

それよりも………あのさあ………きょうはさあ………………いい天気だよね。

 

みたいな。

 

わっ!

なんじゃこれ!

たった背中のちからを抜いただけで、バカになっちゃったよ。

バカが戻ってしまったよ!

 

考えてみれば、そもそもぼくは、すごいバカだったのです。

小学生のころから、授業中ずっと、ばかみたいに窓から山を見てた。

なんど怒られても、チャイムがなっても、教室に帰ってこなかった。

外で立ってろと言われたら、教室を出ていって、もう二度と帰ってこなかった。

なにも怖いものがなかったし、だれから怒られてもへいきだった。

わるぎもなかったし、怒られても、みんな好きでした。

 

ぼくの「まじめさ」「常識」「社会性」は、じつはぜんぶ、背中の筋肉に詰まっているのかもしれないです。

脳筋、ということばがあるけれど、ぼくのばあいは、脳みそが「背中の筋肉」なのかもしれないなあ。

だから、背中の筋肉が異常に盛り上がっているのかな?

これがとれてしまったら、なんかバカになってしまうぞ。

ぼくの本体は「背中」だったのか?

こわい!

こわいけど………

 

 

まあ………べつに………ばかでも………いいかな。

かしこくなっても………そんなに………たのしく………ないし。

かしこくなくても………たのしいことは………たくさん………あるし。

 

たのしいほうが………たのしいし。

 

「ス」のぼくが、言うんですわ。

 

 

春ですね。

 

  • ぽぽんた より:

    なんか 鳴ってる ね ~ って
    ぼけっと 遠くに ?
    大塚くん(だったかなぁ)と ふたり で
    チャイム 聴いてた 
    小学校の頃の エピソード。

    すきでした。˘ ω ˘*ゝ

    • TERA より:

      コメントありがとうございます。

      そういうアホなくせに、かしこいフリして無理するから、いろいろつかれるんでしょうね。

      アホのままのほうが、しあわせです。

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