人間てのは、すごく複雑精緻精妙なる部分があるいっぽうで、「なんじゃそら」と言いたくなるほど単純な部分もあります。
たとえば貧血になったときに、横になって足を上げると治ることがある。
おまえはマヨネーズの瓶か! と思わず突っ込みたくなりますね。
あと、なんとなく寝付きがわるいとき。
そんなときは「狸寝入り」つまり寝たフリをすると、いがいと本当に眠ってしまうことも多いです。
体調に関しても、案外こういうことがあるんじゃないかな、と思います。
日頃からとにかく不調が多くて、あれが痛いこれがつらい、あれが悪いここが問題だ、そういうことばっかり言うひとがいます。
ま、ぼくですけどもね。
そういう人って、一般的には「不健康」といわれるわけですよ。
でも実際に病院で検査をしてみたところで特段なにかが悪いわけではない。
だから結局「自律神経失調症」というゴミ箱病名をつけられて終わりなんですね。
でも本人は、いたって辛い。
「病人の真似をしているのではないか」
そう思うことがあります。
正確には真似というか、病人がやりそうなこと、言いそうなこと、考えそうなことを、わりと日常的に実行しているんじゃないか。
たとえば、「言いそうなこと」でいくと・・・
病人が言いそうなこと
・しんどい、疲れた
・大変だ
・いやだ
・めんどくさい
・いらない
・だめだ
・具合悪い
・ごめんね、すみません
病人なら、言いますね。こういうこと。
だってほんとうに、しんどいんだもの。
できないことが多いから、拒否的な言葉も多くなる。
で、人に面倒をかけたりするから、しょっちゅう謝る。
いっぽう、健康な人っていうのは、こんなことを言うと思う。
健康人が言いそうなこと
・だいじょうぶ
・いいね、いい感じ
・やろう
・おもしろい
・気持ちいい
・よかった
・まかせとけ
べつに病人でもないのに、「病人が言いそうなこと」を言ってしまうクセがつくと、そのうちほんとうに病人みたいになってしまうんじゃないか。
狸寝入りの原理と同じように、病人の真似のようなことをすることで、病人の特性が実際に発現してくるのではないか。
これはぼく自身、感じるところがあるのです。
病人が言いそうなことをよく言っていると、どんどん体調は悪くなる。
健康人が言いそうなことをよく言っていると、体調は良くなっていく。
神経質そうなひとが言うことをよく言っていると、神経質になる。
臆病なひとがよく言いそうなことをよく言っていると、臆病になる。
密教では、「身口意」という秘法が極意のひとつなんだそうです。
ひじょうに乱雑な言い方をすると、「ほとけさまの真似をすれば、ほとけさまになれる」という考え方です。
・仏様が言うこと(真言)
・仏様がすること(印契)
・仏様が思うこと(思念)
を同時に実行すれば、即座に仏様になれる、という。
ふつうに考えたら「そんなわけあるか」と思わずツッコミを入れそうになりますけれども、案外そうでもないかもしれません。
病人の言いそうなことをしょっちゅう言っていたら、病人みたくなってしまう。
そういうことが実際にあるのなら、身口意の秘法だって、あながち荒唐無稽とは言い難いです。
そこで、普段の生活に身口意の秘法を応用してみてはどうだろうか。
・健康人が言いそうなこと
・健康人がしそうなこと
・健康人が考えそうなこと
これをできるだけ、やってみる。続けてみる。
そうするといがいと「わたし」が騙されて、そのうちまるで健康人のようになっていくかもしれません。
そこまではいかなくても、多少は体調が良くなってくるかもしれない。
逆に、病人が言いそうなこと、しそうなこと、考えそうなことは、できるだけ避けてみる。
体調に対して愚痴とか文句ばっかり言うとか、ずっと座って動かないとか、しんどい・めんどくさいことを避けすぎるとか、宗教や哲学的なことに思いを巡らすとか。
・病人が言いそうなこと
・病人がしそうなこと
・病人が考えそうなこと
このことについて、想像力をフルに発揮して考えてみる。
そうしたら、案外ぼくはそれをやっていたことに気がつくのです。
そのなかでも白眉は「健康法を調べる・試す・考える」ということ。
健康な人は、こんなことはぜったいにやらないし、考えもしません。調べもしません。
ぼくは、病人がしそうなことを、マンキンでしょっちゅうやってる。
そしていっぽう、健康人がやりそうなことは、あまりしていない。
体調が悪いのは案外「身口意の秘法」の原理がそのまま出た、というだけのこともあるのかもしれません。
疲れた疲れた言わない。
しんどいしんどい言わない。
ダメダメ、アカンアカン言わない。
健康法とか調べない、読まない、探さない、試さない、考えない。
いい感じ、いい感じ。
調子いいぞ、調子いいぞ。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
へいき、へいき。
やってみよう、やってみよう。
好きなことを、面白いことを、だれかを笑わせることをやろう。
「フリ」だけでもいいから、健康人を演じてみるのも、アリかもしれませんね。
ヒトって案外、演技と事実を区別できないそうです。
それならば、健康で元気な人を演じるほうが、断然お得ですね。