朝から異様にのぼせる。いらいらする。不安になる。焦る。こわい。
原因がよくわからないので「自律神経失調症」といわれます。
ぼくもこの症状にことしの春から悩まされています。
アーユルヴェーダとか漢方とかヨガとかいろいろ試してみても、ぜんぜん良くなりません。
なんじゃこりゃ。
まあ、ちょっとづつマシになってる感じはありますが。
で、じつは昨晩から試していることで、すごく効いてる感じがするのがあるんです。
丹田呼吸法。
丹田すなわちおへその下の方のおなかで呼吸をするっていうやつです。
ザクっというと、腹式呼吸ですね。
息を吸う時におなかを膨らませ、吐く時におなかをへこませる。
そのときに、つねに意識は丹田に置いておく。
丹田は、つまり子宮の位置でしょうね。
男には子宮はないといわれるけど、ほんとはあるのです。解剖図では省略されているだけで。
とってもとっても小さいけれど、男にも子宮はあるそうです。
ぼくはずっと武道をしていたし、ヨガもなんだかんだで4年ほどやってるので、この丹田呼吸法については、
「んなもん、知っとるわいや」
的なアレで、わりと無視していました。
そんなもんはずっとやってるんだから、いまさらやったって自律神経に関係ねーわ、てなもんです。
いや、関係あったかもなあ。
というのも、久々にやってみて、ちょっと驚きましたよ。
丹田がガチガチになっておなかで息が吸えない
状態になってたんですね。
ずっと気になってはいたんです。
例の異様なのぼせやイライラが出るようになってから、腹筋が異様に硬直しているんです。
イライラ、怒涛のような怒り、焦燥感、恐怖感、パニック、そういうのが出ているときは、ほぼ100%腹筋が萎縮して硬直してる。
そして、腹筋の硬直と同時に、肛門も硬直している。
一時期流行った「クンバハカ」っていう、コーモン様にぎゅうぎゅう力を入れるトレーニングのようなものがあります。
あれは中村天風さんという人が提唱したんですけど、中村氏は晩年「おれが言ったことは全部忘れろ。間違ってた」とおっしゃっていたんだそうです。
実際このクンバハカをやるようになってパニック障害が悪化した、という人はよく聞きます。
まあふつうに考えれば、神経系の異常って大概は余計な緊張なわけで、コーモン様といえどもあまり意図的に緊張させるべきではないのでしょうね。
筋肉が硬直するということは、その部位の血や気の流れも停止してしまうということです。
さておき丹田呼吸法ですけれども「おなかで息が吸えない」のは、どうやら腹筋とコーモン様が硬直しているからのようなのです。
そのあたりにギンギンに力が入っているので、おなかがほとんど膨れないんですね。
そこで、できるだけ腹筋とコーモン様のちからをぬいて、下腹にせいいっぱい息を吸うようにしてみたら、だんだんとスジが伸びてきて、おなかで息が吸えるようになってきました。
それと同時に、あの妙なあたまの鬱血感もとれてきて、息苦しさや立ちくらみもかなり頻度が減っていくのでした。
「あたまに血が上る」って、やっぱり腹筋とコーモン様の過緊張のような気がするんですね。
そんなにぎゅうぎゅうおなかを締め付けてたら、そりゃあ血がアタマに上がるわなあ。
歯磨き粉のチューブのケツのほうを、握りつぶすようなことしてるんだもの。
それで血圧も上がらず、あたまにも血が上らないのなら、そのほうが断然おかしいです。
血はどこへいったんだ。
ちなみに最近、不可解なこともあったんです。
ぼくはわりと姿勢はいいほうだと言われるんですけど、例の朝の怒り・そわそわが出ているころは、ひじょうに姿勢が悪くなっていたんです。
仕事をするときも、ついつい椅子のうえであぐらをかいてしまう。
で、おなかを抱え込むような感じになって、せなかが丸くなってしまうんです。
意識して治すんですけど、気がつけばまたやってる。
おかしいなあ、こんなクセなかったのになあ、なんだろう。
けっこう謎だったんです。
丹田呼吸法をするようになったら、このクセは治っちゃったんですよね。
で、思ったんだけど、背中が丸くなってしまうのってじつは「気が上がってる」からなんじゃないでしょうか。
猫背って、なんとなくだらしないイメージがあるから、脱力している「ように見える」んですよね。
でも実情は、腹筋やコーモン様によけいなチカラが入っていて、血とか気が頭や上半身に上がっていっているんじゃないかなあ。
腹筋とコーモン様のちからを抜いて、丹田にいっぱい空気が入るようにしてみたら、しぜんと姿勢が伸びてくるんですよね。
腰が入ってくる。
姿勢を正すのって、じつは筋肉じゃなくて、内臓とか横隔膜なんじゃないか?
いわゆる「ひさご腹」っていう、下腹ぽっこり、みぞおちが凹んでるおなかの形があるそうです。
現代ではかっこ悪いといわれますけど、一説によると、ひさご腹のほうが健康的でよいお腹であるともいわれます。
そういえば仁王さんも、こんなおなかをしてるんですよね。
実際のところ、おなかとコーモン様のちからをぬいて、下腹が自然にふくらむような感じにしていると、気分がずいぶん落ち着くというのはあります。
ぎゃくに、いま一般的にカッコイイとされている、下腹を引っ込ませて胸を開いたような格好をしていると、だんだんハラたってくる。
焦りとか恐怖とか、そういうのも出やすくなってしまうんですよね。
確かにこれって「イヌのような腹」なんだよなあ。
下腹よりも、胃のほうが出ているような感じ。
どうしてこれがカッコイイということになったんだろう。
こういう写真を見ていると、すこし不安になります。
「お前……内臓どこへ行ったんや」
皮下脂肪とか、内臓脂肪がない「ひさご腹」って、あるんです。
なぜ断言できるかというと、ぼくが高校生〜大学生のころ、そうだったからです。
むちゃくちゃ柔道させられて、体脂肪率は8%ぐらいでした。
それでも「ひさご腹」になっていました。
じつは当時、わりと悩んだんです。
腹筋が6つに割れてるのに、皮下脂肪も内臓脂肪もほとんどないのに、どうしておれは、こんなにおなかが出ているんだろう。
みんなは、もっと下腹がシュっと小さいのに。
今考えてみれば、だからこそ、健康だったのかもしれないんですよね。
脳波や心電図の波形があまりにもきれいだったので、ぼくの脳波と心電図は医学部の教科書に掲載されたぐらいです。
あの当時仁王さんをちゃんと見ていたら、もっと自信が持てたかもしれないんですよね。
「おれの腹って、仁王さんと同じだ!」って。
皮肉なもので、今更になって、ぼくの腹は当時憧れていた「イヌのような腹」になりつつあります。
イライラや、恐怖や、めまいを引き連れて、ぼくの下腹はちいさくなった。
仁王さんのハラに戻ろう。
テレビとか雑誌とかネットがいう「かっこいい」は、やっぱ間違えてると思うんだな。
すくなくとも、からだにわるい。
皮下脂肪とか内臓脂肪じゃない、「ゆたかなおなか」になろうと思います。