なんということでしょう!
ほとんどのことは、妄想じゃねえか。
最初はなんとなく「個性という妄想」なんてことを思っていたんです。
さいきん「人と違ってもかまわない」とか、「個性を伸ばすことが大切です」とかいう話をよく聞くんですよね。
人間は十人十色、ひとそれぞれ違っていることは自然だし、ひとと違うことを異常だと思わなくていい。
むしろ人と違っている部分を伸ばすことが、だいじなんです、みたいな。
ぼくはパニック障害持ちだから、こういうコトバってなんかココロに響くんですよね。
そうだよね、ぼくは人とすこしちがうけど、わるいことじゃないよね。的な。
いや、そうじゃないだろ。
「パニック障害持ちだから、人とはちがう」っていう捉え方が、もうバッチリ妄想じゃあねえか。
病気だろうが、病気じゃなかろうが、人は人だ。
だから申し訳ないけど、ぼくはほかのだれとも違ってない。おんなじだ。
おんなじだから、そもそも恥じ入る必要もないんですよね。劣等感を持つ必要もない。
だれだって、できることと、できないことがあるんだもの。
ぜんぶ完璧にできるやつなんて、人間じゃないよね。妖怪です。
ぼくは人間だから、できることと、できないことがある。
病気ってつまりは「できないこと」のひとつですからね。
いったいどこが、なにが、人とちがうねん。
ほかのひととおなじように、できることと、できないことがあって、悩みも持ってる。
おんなじだ。
だから「個性」っていうのは、妄想の一種なんじゃないかな、と思った。
……そしたら、ひじょうに怖いことに、気がついてしまったんですよ。
ほとんどのことが、妄想じゃあねえか馬鹿野郎。
心臓がドキドキして、おわ、心臓病じゃないか、もっとヒドくなるんじゃないかと思うのも、妄想。
朝起きて、なんか今日調子悪いなー、仕事うまくいかないんじゃないかな、とか思うのも妄想。
娘の帰りが遅いけど、あいつ事故とかに会ってねえよなとか思うのも妄想。
今日の昼飯なに食おうかな、も妄想。
なんか面白い映画ないかな、も妄想。
いまのうちにアレしといたほうがいいな、も妄想。
オッシャレー、も妄想。
かわいい! も、妄想。
あいつムカつく、も妄想。
おわ、なんじゃこれ、考えてることって、ほとんどぜんぶ妄想だったのかよ!
やっべ。
おれ、なにやってたんだろう。
こんなもん、神経疲れるに決まってるわなあ。
「妄想疲れ」するわ。
「それを考えて、どーするつもりなの?」
っていうセルフツッコミが、足らなかったなあ。
そーゆーの、もういいから、いましてることに集中すれば? って。
「いま考えてたことは妄想だ」ってわかると、なんだろう。
なんかほっとする、ような気がする。
「これは妄想なんだから、そんなに真剣に考えなくてもいいかナ」って思うからですかねえ。
あるいは、どうせ妄想なら、もっといいふうに考えてもべつにかまわないって、思えるからかな。
考えてる、なんて、エラッソーなことヌカしょるけれども、それだいたい妄想。
感じたことに、反応して、いろんな情報をペッタペッタペッタペッタくっつけ回して、なんとかそれっぽいカタチにしただけ。
だから「考えてる」「思ってる」んじゃなくて、「反射」してただけなんだよなー。
これも妄想。
そんなことどうでもいいから、バナナでも食うか。