あと、ひと部屋。

ぼくは、ぼくの感覚を信じるようになりました。

もう、間違いないな。

 

なぜか1階のリビングで食事をしていると、異様にそわそわ、いいらしてしまう。

2階の仕事部屋や寝室にいるときには、そうでもないのに。

だから起立性障害かなとか、自律神経失調症かなとか、ストレスかなとか、全部「ぼくの神経」のせいにしていました。

 

違いました。

ぼくはぼくの脳と神経に、土下座をして謝りたいです。

神経がおかしかったんじゃないんです。

むしろぼくの神経は当初の設計通り「きちんと」異常を検知してくれていたのです。

 

1階のキッチンまわりを徹底的に掃除をしましたら、あの「異様な感覚」がかなりなくなったんです。

まあ最近はかなり涼しくなってきているので、その関係もあるとは思いますけどね。

でも全然、感覚が違うのです。

気温や湿度によって生まれるのは、あの怒りのような、恐怖のような、えげつない感覚ではない。

 

ぼくはもともと、お風呂が大好きです。

男のくせに入浴剤なんかに凝ったりするほど、バスタイムが好き。

しかし昨年の夏ぐらいから、ぼくはどんどん風呂嫌いになっていったんです。

ぼくはこのことについて「ウツなのかな」とか考えたこともありました。

あるいはパニック障害から外出恐怖になっていったように、これも風呂場恐怖の発展なのだろうか、とさえ思いました。

またぼくはこのように「じぶんの神経」をわるものにして、疑っていたのです。

たぶん、そうではなかった。

というのも、昨日は風呂場を掃除したのです。

自分でいうのもなんですが、お風呂場はかなりきれいにしているつもりです。

黒カビなんかほとんどありませんし、排水溝も常にきれいにしています。

しかし、やはり風呂場にも「死角」がありました。

 

窓です。

風呂場の窓には「はめ殺し」の網戸があって、この網に黒カビ点々とありました。

とはいえ、もう真っ黒で地獄のようだ、というほどではありません。

ちょっとうっかり掃除をし忘れて出ちゃったた、程度。

そこで網戸を掃除しておりましたら、じつはこの網戸、はめ殺しだと思っていたら「カパっ」と取れることに気がついたのです。

そしてその網戸の向こうには、レバーで回転して開くタイプのマドがあります。

網戸を外した窓を見て、ぼくは絶叫しそうになりました。

窓のフチが、黒カビで真っ黒だったのです。

網戸のフレームに隠れていて、見えなかったのでした。

そしてその窓を開けますと1階なのでアルミの格子があるのですが、その網戸にも、黒カビがみっしり。

なんでだ?

どうして屋外なのに、こんなに黒カビが?

カビどころか、その格子の金属の棒に、よくわかない虫の卵のようなものも、みっちりとくっついていました。

 

よく見れば、鉄格子のすぐ外に「よしず」が針金でくくりつけてあったのです。

風呂から外を見るなんてほとんどしないので、全然気が付きませんでした。

どうやら両親が、外からの視線を気にして設置してくれたもののようです。

しかしこの「よしず」こそが元凶だったのです。

このせいで風の通りがわるくなり、日光も入らないせいで、黒カビの天国になっていたのでした。

もちろん、このよしず自体にも、黒カビが盛大に生えていました。

ただでさえ湿気の多い風呂場のマドを植物性の腐りやすい物質で覆うなど、やってはいけないことだったのですね。

当然、よしずは取り払い、格子も窓のサンも、網戸も、ぜんぶ完全に清掃をしました。

 

もう風呂場にはいっても、あの「いやな、不吉な感じ」が、なくなったのですよね。

ぼくはどうやら、黒カビにかなり敏感な体質のようなのです。

非常に多い黒カビを検知すると、ニオイを感じなかったとしても、不吉で、おそろしく、まがまがしい、いやあな感覚を持つようなのです。

それが継続すると、怒りや恐慌といった精神状態になることもある。

風呂場の「地獄」は、じつは窓にあった。

つい排水溝や換気扇、ドアなどに注意が向きがちですが、「風が通るんだからカビは生えにくいだろう」という先入観のせいで、窓が死角になっていたのです。

よしずのせいで、じつは風と光が通らなくなっていたのでした。

 

もう「気のせい」「考えすぎ」だなんて、言わせないぞ。

すくなくともこの家においては、「ここにいると、なぜかとても気分がわるくなり、怒りや恐怖の感情が激昂する」という場所には必ず「地獄」がありました。

そしてそれを浄化すると、不吉な感覚も消えていく。

ぼくの神経は、なんにもおかしくなかった。

むしろたいへん正確に、地獄を警告してくれていたのです。

霊感とか、そんなあやふやなものではないです。

霊なんかいない。

そこにいたのは「毒素」だったのです。

 

あと、ひと部屋。

もちろん、細かいことをいえばまだいくつか微細な「危険信号」を感じる場所はあるのですが、完璧を目指すと別の意味で息苦しくなるので、あまり追い詰めないことにします。

しかしあと一箇所だけ、デカイのがあるんですよね。

母親が以前使っていた部屋です。

いま母は別の家に住んでいますが、彼女が出ていってから、その部屋には異臭が立ち込めはじめました。

家族の全員がなんにも臭わないといういうけれど、ぼくには強烈な刺激臭として感じられます。

ぼくが敏感すぎるのではないのです。

ほかのみんなが、にぶすぎるのだ。

パっと見た感じ、モノは多いものの、確かにそこそこ整頓されていて、大丈夫そうに見える。

でもぼくは、確信しています。

この部屋の、どこかの死角に、かならずまた「地獄」がある。

これを浄化したら、大仕事はいったん一区切りになると思います。

 

 

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