変化に弱い身体

自律神経の調子が狂いやすいことについて、それを「ストレス」という心理的なことに原因を求めてしまったところから、ややこしい話になっていったような気がします。

パニック障害についても、やはり「こころ」の問題を持ち出すことが多いです。

 

おそらく、心因性のことが大きな原因になっている場合と、肉体的・物理的なことが原因になっている場合の二種類があるんだと思います。

初動でこの判断をミスると、ややこしい話になってしまう。

 

最近、ぼくのこの不調は心因的なものではなく、もっとプリミティブなことが原因ではないかと感じ始めています。

というのも、不調が訪れる際、神経が非常に過敏になっていることに気がついたからです。

心療的には、精神的ストレス→交感神経の興奮→神経過敏、という解説があります。

しかしおそらく、この「精神的ストレス」というのが、必ずしも最初にあるわけではないのです。

むしろぼくの場合、多くは交感神経の興奮→神経過敏→不調→精神的ストレス、という流れです。

精神的なストレスというのが、「結果」として出てくる。

ようするに、いろいろ具合がわるいので、イライラしたり落ち着きを失ったりする。

 

交感神経が突如興奮してしまう、その原因のひとつに「ハウスダスト」があったようです。

ホコリやカビなどが多い環境に長期間いるとアレルギー反応を起こすようになってきて、これがまた若干ややこしいのが、咳やくしゃみなどは出ない。

そっちのほうに出ずに、神経の興奮というカタチで出てしまうようなのです。

しっかり掃除をするようになると、この反応の回数が減っていって、結果神経が落ち着くようになってきました。

 

あともうひとつ、発見しました。

それは「温度」です。

気温の変化に対しても、急激に神経が興奮する場合がある。

朝、夕方、季節の変わり目など、気温が大幅に上下する時間帯に、神経がおかしくなるようなのです。

 

ようするに、暑さ寒さに弱い。

これは、どういうことなのか。

じつは日本人というのは世界中でいちばん暑さ寒さに弱いという説があります。

これは自然環境や人種的なことではなく「エアコン」のせいなんだそうです。

日本のエアコンは性能がよく、また電気も安定供給されていて、生活レベルも高くちゃんと電気代も払えるのでエアコンをよく使います。

加えて、住宅は気密性が高く保温性がよく、衣服も高機能です。

じつはこの高い文明水準こそが暑さ寒さに対する柔軟性を失わせているかもしれない、という話です。

 

北欧は非常に寒いですが、じつは北欧のひとは寒さに非常に弱いのだそうです。

氷点下何十℃という下手すると死んでしまう可能性もある極寒期もあるため、暖房設備が非常によく発達していて、北欧のひとたちは冬季ずっと暖房のある生活を送っているのだそうです。

結果、かえって寒さには弱くなってしまった。

これは北海道の人が意外と寒さに弱い、というのと似た構造です。

じつは北欧のひとよりも、オーストラリアの人のほうが寒さには強いんだそうです。

オーストラリアは比較的温暖なところですが、とはいえ冬は5℃ぐらいまでは下がる。

しかし死んでしまうほどではなく、我慢すればまあ我慢できるぐらいの温度なのですね。

だからあまり暖房器具は使わないのだそうです。

結果、へんな話だけれども、極寒の北欧人よりも寒さには強くなってしまった、という。

日本は、近畿や中部、中国地方、九州と関東の一部までは気候的には亜熱帯に属していて、オーストラリアぐらいなものです。

だけど日本では、けっこう暖房も冷房も使います。

冷暖房がないお店やオフィスというのは、最近では見かけないぐらいですからね。

 

ぼくの場合は在宅勤務なのですけれど、ちょっと寒いと暖房をかけ、ちょっと暑いと冷房をかける、という生活を10年ぐらい送ってきました。

どうもこのせいで、暑さにも、寒さにも弱くなってしまったようなのです。

大学生のころまでは学校にエアコンも暖房もありませんでしたし、ぼくが所属していた柔道部も、道場にエアコンなんかありませんでした。

しまいにはシャワーも冷水しか出なくて、真冬に絶叫しながら浴びていたのを思い出します。

たいへんつらかった記憶もありますが、しかし案外このことで暑さ寒さに強くなっていったところはあるんだと思います。

人間には順応性というのがあって、幼児や高齢者以外はかなり広範囲の温度帯に適応できるように設計されているんだそうです。

だけどこの機能も、つかわなければどんどん弱くなっていってしまう。

 

最近熱中症の人が激増しているという話もありますが、もしかしたら温暖化とかヒートアイランドとかいう話だけではなく、エアコンの多用で単純に自律神経が「ばか」になってしまった、という可能性もありますね。

考えてみれば日中ふつうに40℃を超えるインドなんかでは、こんなに熱中症が出ていたら人口が激減しているはずです。

でもインドはむしろ、人口が増えていっている。

インド人がすごいというよりも、もしかしたら人間というのは相当高い気温まで「いける」機能を持っているのかもしれません。

 

ぼくの神経が最近おかしいのも、もしかしたら冷暖房に頼りすぎた「ぬるい」生活のせいかもしれないんですよね。

だからもう、一切冷暖房は使用しないんだ!

—— なーんつって、それはちょっと、正直無理ですけどね。

でも今年の冬はできるだけ我慢してみようかな、とも思うのです。

理屈で思いついたんじゃなくて、如実に「感じた」のですもの。

ぼくの場合の不調は、心因的なストレスが大きな原因じゃない。

それよりももっと単純な、身体的・物理的刺激が大きい、ということに。

そしてその最たる原因のひとつが、暑さ寒さへの弱体化だということに。

 

自律神経がおかしいから暑さ寒さに弱くなったんじゃなくて、逆なんじゃないかな。

暑さ寒さに弱くなったせいで、自律神経がおかしくなってる。

最近の日本は暑くなった、寒くなったと環境に文句をたれるまえに「わたしが、あわせる」っていう努力も必要なんだろうな、と思ったんです。

柔よく剛を制す。

エアコンや暖房器具で、暑さ寒さと戦ったり、防いだりするっていう「剛のみち」ではなく、「わたしのほうが折れる」「わたしが相手にあわせる」という「柔のみち」も考えていこうと思います。

人間は、思ったより頑丈で、柔軟にできてる。

機能は使わないほどに、衰えていくものです。

あたまも、こころも、筋肉も、使わなければ衰えていく。

おなじように、ぼくの自律神経がイマイチなのは病気云々じゃなくて「使ってない」からじゃないのかな、なんて。

 

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