ぼくは長年、ものすごい勘違いをしていたのでした。
リラックスというのは、だらだらすることだと思っていた。
これ全然ちがうんですよね。
だらだらする、あるいはだらけるっていうのは、むしろ緊張を招くのでした。
からだが歪んで、重心がずれて、からだのへんなところに負荷がかかったり、呼吸が浅くなったりする。
それで血行不良になったり換気不足になったりして、結果イライラしたりしてしまうんですよね。
これに気がついたのは、座禅を毎日するようになってからです。
きのうでちょうど80日目を迎えました。
どうしてそう思ってしまったのかは謎なのですが、「姿勢を正していてはリラックスはできない」という、ひじょうに強い固定観念がありました。
そして、背中を丸めてアゴを突き出し、脱力している姿勢のほうが楽だ、とも思っていました。
しかし坐禅をするとよくわかるのですが、むしろ背中を丸くしてアゴを突き出すような姿勢をしているほうが、ぎゃくにシンドイ。
時間が経つのも長く感じるし、背中とか腰とか首とかがしんどいし、息苦しくなるし、ぜんぜんリラックスできないのです。腹たってくる。
顎を引き、腰を入れて、ピシっとした姿勢をしているほうが、「断然」らくちんなのです。
姿勢を正していてはリラックスができないと思っていましたが、全然そんなことなかった。
姿勢をピシっとしていても、リラックスはできるのでした。
ていうかむしろ、ピシっとしているほうが神経はリラックスするようなのです。
ぼくは自律神経失調症のようなものがあって、たまにふらついたり、息苦しくなったり、まめいがしたり、息苦しくなったり、動悸がしたりすることがあります。
これをよくよく観察してみると、共通点がありました。
「長時間デスクワークをしていて、立ち上がった時になる」
っていう共通点が。
一種の起立性障害みたいなことかもしれませんが、でもこれはべつに病気とかではなさそうです。
背中をまるめて顎を突き出した姿勢でデスクワークを長時間していると、立ち上がったときに具合がわるくなるのです。
しかし姿勢を垂直にして、アゴを引いてやっていると、そこそこ長い時間作業をしたあとに急に立ち上がってもふらつきや息ぐるしさは出ないのです!
考えてみれば、あたりまえです。
だらーんとして緊張感なく、背中や腰を丸めていると、腹圧がとても高くなります。
腹圧のせいで、血がぐいぐいアタマに押し込まれていくんですね。
そこで急に立ち上がったらアタマ方面の血液が急に開放されて下に落ちて、瞬間的に貧血っぽくなるのです。
そこでふらつきや息ぐるしさ、動悸が出る。
また、背中を丸めていると肺活量が少なくなっていて、いわばちょっとした酸欠状態になっています。
そこでパっと立ち上がったら、きゅうに肺に酸素が大量に入ってきて、一時的に酸素量が多すぎる状態にもなるのかもしれません。
そこで妙な苦しさというか、酸欠っぽい感覚を味わうことになる。
おそらく、血圧や血のpH値が急激に変化すると、それを正常化しようとする反応がおこって、いろんな気持ち悪さが噴出するんだと思います。
これはけっこう怖い感覚なので、恐怖や焦燥感を感じることもあり、場合によってはこれがパニック発作のきっかけになることさえあります。
ダラダラすんな!
昔よく怒られたものですが、これはべつに人を拘束するための恐喝ではなかったのでした。
ダラダラしているとぎゃくに疲労感や不安感が増えてしまい、かえって強い緊張感を持ってしまうはめになる。
それを防止してあげようという、愛のある叱責だったのだと思います。
こころのリラックスは、姿勢をピシっとしていても、全然可能。
むしろピシっとしているほうが、おそらくリラックスの強度は高くなるんじゃないかとも思います。
そこで重要なのが、やっぱり「腸腰筋」だと思うのです。
姿勢の維持を広背筋や脊柱起立筋、腹直筋や外腹斜筋といったアウターマッスルで維持しようとすると、たしかにシンドイのです。
もともと「パワーワーク用」の筋肉なので長時間の連続使用に適していないし、そのあたりの筋肉を緊張させてしまうと体幹の立体伸縮を防いでイキが苦しくなります。
腸腰筋という腰骨とフトモモの骨を結んでいる筋肉を使って姿勢を固定すると、腹筋や背筋はチカラが抜けていても全然問題ないので、呼吸が楽です。
それに腸腰筋はインナーマッスルなので長時間連続使用に耐えうる特性を持っています。
これを使わず「表側の筋肉」だけでなんとかしようとしていたから「脱力=リラックス」というような誤った公式を思いついてしまったのだと思います。
キンニクキンニク、うるせえんだよなあ。
ぜんぶ外側のことばっかり言うし。
肝心なのは、やっぱり「内側」ですよね。
外見の美しさよりも内面の美しさのほうが根本的に重要なのと同じで、筋肉もきっとそう。
内側が強いひとが、ほんとうに強い人ですもんね。