川柳の世界

ほんとにふしぎだなあ。

あれだけキライで拒否していたのに、オッサンになってくるとダジャレとか川柳とかが「いいな」って思うようになる。

なんでだろう。

なんか、アタマの中の線がどこか切れてしまうのでしょうか。

 

川柳にはいろいろあって「サラリーマン川柳」っていうのが有名らしいですね。

過去の優秀作品には、こんなのがあるようです。

スポーツジム 車で行って チャリをこぐ

五時過ぎた カモンベイビー USAうさばらし

退職金 もらった瞬間 妻ドローン

 

なるほどね。

なるほど。

なるほど。

 

……これ、面白いのかなあ。

なんだろう。

うーん、ほんとに「なるほどね」で、正直あんま面白くないなあ。

 

それよりも「派遣川柳」のほうが、ずいぶんイケてる気がする。

時間給 買い物するたび 換算し

 

何になる? 子供の答えは 正社員

 

完璧に できるんだけど 指示仰ぐ

 

派遣とは イラクなのかと 祖母は聞く

 

派遣なの? 役員よりも 顔広い

 

こっちのほうが、笑えますね。うまい! って思う。

 

しかし、これのさらに上をいく川柳があってその名も「ニート川柳」。

母パート 妹デート 俺ニート

 

父起きる 弟起きる 私寝る

 

明日から ああ明日から 明日から

 

大丈夫 まだ大丈夫 大丈夫

 

いい加減 気付けよお前 アウトだぞ

 

いいなあ。

サラリーマン川柳の「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」よりは、何倍もセンスいいなあ、って思う。

 

しかしこれでもまだまだ、甘いのでありますね。

はやり究極は「老人川柳」だと思うのです。

 

アーンして 昔ラブラブ 今介護

 

誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ

 

LED 使い切るまで ない寿命

 

三時間 待って病名 加齢です

 

年上が 好みだけれど もういない

 

アカーン! こんなん笑うわ!

いやあ、これはなんというか、かなりのハイクオリティなのではないのでしょうか。

内容的には決してめでたい話ではなくて、むしろ悲哀が漂うものなのに、なんか笑ってしまう。

「自虐」というのはあんまり好きではないけど、ここまでぶっ飛んでしまうと、もはや芸術的とさえ思ってしまいます。

 

こうしてみると、川柳というのは「苦労している人」が詠むところに意義があるのかな、なんて思いました。

川柳って笑いがないと意味がないし、笑いって「緊張と緩和」って言われるので、つらい思いをしているひとがそれを笑いに変換すると、強烈な笑いになってしまうんでしょうね。

むろんサラリーマンだって苦労はしていると思うんだけど「何になる? 子供の答えは 正社員」に勝てるものが今後出てくることはないような気がする。

 

ふと思ったんだけど、「自律神経失調症川柳」とか「パニック障害川柳」とかもあっていいかもな、と思いましたね。

症状のイチイチに悩んだり考えたり落ち込んだりするよりも、川柳にして笑い飛ばしてしまったほうがいろいろいいような気がする。

 

でもなあ。むずかしいよなあ。

がんばってひねり出してみた。

恋かもと 思い込みたい この動悸

うーん、イマイチだなあ。

説明的すぎるし、そもそもなんのことかわからん。

メニュー見て 頼むものなし 喫茶店

これはカフェインがダメなので喫茶店とかに行くとカフェインものばっかりで頼めるものがすごく少なくなる……っていうパニック障害者の悲哀を書いてみたんだけど、説明しちゃあダメだな。

ボツ。

頬そめて 見つめる理由(わけ)は ホットフラッシュ

いや、これはただの更年期障害じゃねえか。

ストレスで 済ますあなたが ストレスです

落ち着けと いわれてできたら お釈迦様

うむ、この角度の系統はもう少しヒネったらなんとかなるかもなあ。

でも、なんか足らんのだなあ。そうだコントラストが足りない。

発作慣れ うまくなったよ 怖い顔

上司より 鬼より怖い バス電車

うーん、まあそうなんだけど、悲しすぎるなあ。あんま笑えない。

ダラダラしてんだよなあ。

そうか、あんまりくそまじめに掘ると深刻になってダメなんだな。

 

いやもう、あの「年上が 好みだけれど もういない」とかに勝てる気がしない。

ていうことは、そんなに苦労してるわけでもないのかもなあ。

強い不安こそが強烈な笑いに変換されるらしいんだけど、なんかこう、甘いんだよなあ。

あ。 そうか。

おれがヘタクソなだけか。

もうすこし、がんばってみようかな。

 

 

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