今回は思い切ってソファを仕事場から排除してやったのであります。
このソファはけっこう大きく、もらいものですが座り心地はよく、本皮なのでモノは良いものなのだと思います。
娘もお気に入りで、よくこのソファで横になって寝たりしていました。
仕事部屋に置いていたのは「休憩のときにちょっと横になれたらいいな」っていうのと、来客があったときにも応接に使えるかも、という魂胆です。
しかし長年在宅ワークをしてきて、
・休憩としてソフアに座ることはほとんどないし、しないほうがいい。
・そもそも来客なんかほとんどない。
という非情な結果が出てしまったのでありました。
確かに仕事の合間に休憩を挟むことは良いことですが、横になりたければベッドで横になれればいい。
むしろ仕事中にゴロゴロ横になることじたいがあまり良くないことにさえ気が付きました。
横になりたいぐらい疲れているときは相当疲れているのでもう仕事なんかほったらかしてしっかりベッドで横になったほうがいい。
それほどでもなければ、歩きにいったりラジオ体操でもするほうがいいのですね。気分転換になる。
そしてこれをよく利用していた娘はもう一人暮らしで家を出ていってしまったから、正直「無用の長物」となりはじめていたのでした。
そこで思い切ってソファを取り覗いてみると、あたりまえですが仕事部屋が広くなりました。
ソフアがあるがゆえにレイアウトに制限がかかっていたことがわかりました。
そして「視界の圧迫」ということも生まれていたのです。
机から前を見ると巨大なソファが目に入っていたのですが、これが意外と圧迫感になっていたようです。
ソファがなくなるととても見通しが良くなりました。
へんなもので、目が楽。あたまが楽。
「モノが多いと脳疲労を引き起こす」というのはマジなんだそうです。
無意識に不要な情報処理をしてしまっているのですね。
これと似たようなことで、机の正面を壁に向けているのもかなり疲労します。
デスクトップパソコンのディスプレイを正面に置いていても、同じです。
これは脳的にどうなのかはわかりませんが、東洋医学的には「印堂圧迫」というのだそうです。
印堂というのは眉間のことで、正面に壁や巨大な障害物があると圧迫感でアタマがおかしくなってくる、っていう。
わかる。
ぼくは机は徐々に壁に向けないようになって、パソコンのディスプレイは斜め前に置き、作業時にはそっち側をむくようになりました。
そうすると、なんか息苦しさが減って呼吸が深くなるのです。
真正面からの「ぐっ!」が消えると、あたまが楽。
そういえば以前「壁一面の本棚」っていうのに憧れて、そういうレイアウトにしたこともあります。
尊敬する澁澤龍彦氏の書斎はかっこいいなあ、と思うのです。
澁澤龍彦さんのお誕生日らしいのでこの写真を再掲載。こちらは『藤田和日郎本』の取材で、かの有名な書斎を訪れた際の写真です。こういうお部屋、憧れますね。 #澁澤龍彦 pic.twitter.com/rilPDLTxXb
— 島田一志 (@kazzshi69) May 8, 2019
これを真似て背中側に本棚、というレイアウトにしてみたこともあります。
壁と本棚に囲繞された空間というのはかなり集中できそうだ……というのは、完全に勘違いです。
どんどん気分が圧縮されていって、そのうちバクハツしそうになります。
だああああっ、なんか、もうっ、ハラタツっ!
とりあえずそのへんのネコでも蹴りにいくか! それともだれかドツきにいこか! はったおすぞ!
ワーレー!
っていう気分になる。
アカンのです。
よく風水などで「背中に壁か本棚」「部屋の奥に背中を向ける」などということを言いますが、案外「目の前の空間」のことは何も言わないのですね。
じつは「背中に壁」と「目の前になにもない広い空間」はセットだったのです。
だから家具の多い部屋で背中に壁だの本棚など置いたり、ましてや巨大なディスプレイで顔面を圧迫するようなことをすると「印堂圧迫」となって結局意味がないどころかよけいに具合がわるくなる。
個人的な感覚としては大きなディスプレイを使う場合はむしろ壁側に机を向けるほうがマシです。
背中でもいいから広く空いているほうがまだ「逃げ道がある」からです。
背中を壁で包囲し正面をディスプレイで閉塞し左右のどちらかに壁があると、板挟みで逃げ道がなくなって囚人のような気分になり、そのうち気が狂いそうになるのであります。
やめといたほうがいい。
まあこれはもともとぼくが狭い空間がとても苦手というのもあるのでしょうが……。
「ディスプレイの位置」でGoogle検索をすると、まるでハンコで押したかのように「真正面に」って出てきます。
これも疑ったほうがいいです。
そりゃあ作業効率とか姿勢の関係を「理系的に」考えればそうなるのかもしれませんが、人間は残念ながら機械でも人形でもない。
思い、考え、うごき、ねじれ、呼吸をし、悩む生き物である。
だからディスプレイのような巨大でびかびか光るへんな板を真正面に遮蔽物として設置すると圧迫感でストレスを感じるのでありますね。
ましてやその状態で背後に壁があったりなんかしたら、サンドイッチで発狂必至であります。
思うに「風水」というのは何十年か前に進化するのをやめてしまったのでしょう。
ことIT系の作業ということについてはなんのアドヴァイスも論理的な説明もありません。
もはや古典となって現実的なパワーを完全に喪失したイデオロギー。
こういうものとはスッパリ縁を切って「答えを既存のロジックに求めるのではなく、自身の感覚を観察してあたらしいロジックを組み立てていく」っていうことが必要なんだと思います。
考えるな、感じろ! っていうやつですね。
モノがすくない、整理整頓、ていねいな掃除、換気。
風水なんか関係なく、結局はこれがいちばん重要なことなのだと思います。