パニック障害や自律神経失調症になると、この世の賢者も愚者も口をそろえてこう言うのである。
「ストレスだ」
べつにこれが間違っているとは思わない。
ストレスが原因でそうなることは多いのだろうと思う。
しかし「それだけではない」とも、確実に思う。
ぼくはかれこれ10年以上パニック障害で悩んできたが、とても単純なことで発作回数が激減するようになった。
それは「掃除」であった。
掃除をやりはじめたころは逆に発作が多発したものだが、毎日続けていくと格段に発作回数が減っていったのである。
このことから、ある疑いを持った。
「アレルギーだったのではないか」
発作を起こす直前の、あの名状しがたい、非常に不愉快な感覚。
これがトリガーとなって、発作へ一直線に向かうのである。
頭の奥が炎症をしているような、充血しているような、息苦しいような、妙な感覚。
頭が熱いのか?というと、そうではない。
呼吸ができないのか?というと、そうではない。
しかし、そのような、なんともえいない不快感がたしかにある。
だから「名状しがたい」のである。
そしてこのトリガーは、まさに「無条件に」顔を出す。
とくに何かをしていたら出るというのであれば、それをしなければ良いのだから、まだ対処のしようがある。
むしろ好きなことをして、楽しんでいるときでさえ、あの妙な症状が出ることさえある。
この無条件性こそが、パニック者をさらに苦しめるのである。
無条件、と考えていた。
ほんとうに、そうだろうか。
何かを食べたとか、どこかへ行ったとか、そのような「行動」を「条件」と定義していたから、無条件だと考えたのではないか。
条件が、必ずしも「行動」であるとは限らない。
行動とは関係がないところで起こる刺激が条件になっている場合もあるのではないか。
その可能性のひとつが「アレルギー」である。
アレルギーには刺激を受けてすぐさまに反応が出る「即時型」と、しばらく経ってから反応が起こる「遅延型」がある。
遅延型のばあい、そのアレルギーの原因をつかむことが難しい。
たとえば蕎麦の即時型アレルギーだった場合は、食った瞬間に「蕎麦が原因だ」ということがわかる。
しかし遅延型だった場合は、10分も20分も、場合によっては1時間経ってから反応が出る場合があるから、原因が突き止めにくいのである。
もし、パニック発作の原因が「ハウスダストの遅延型アレルギー」だった場合はどうなるか。
たとえば家の中で10:00にアレルゲンを吸引したとする。
しかし遅延型のばあいは、かなり時間が経ってから反応が出る場合がある。
10:00に家を出て、10:30頃に外出先で反応が出てしまったら、必ずこう思うのである。
「なんじゃ、これは!」
そのとおりである。
必ず家の中だけで発作が起こるのであれば、原因は家にあると容易に推測できる。
しかしこれが可能なのは、即時型の反応の場合だけである。
遅延型の場合は原因となる刺激を受けてからかなり時間が経ってから反応が出るので、まさに「無条件」のような感じを受けてしまうのである。
人間は悲しいかな直前に起こったことしか原因だと思えない性質があるようである。
上記の仮説と、ぼくの発作の状況を確認してみると、ハウスダストによる遅延型アレルギー発作の可能性を濃厚に感じるのである。
実際にわざとホコリまみれになってみると、ぼくのばあいはこともあろうか「45分後」ぐらいに反応が起きることがある。
そして、その反応の症状はまさにパニック発作に至る「あの感覚」と完全に同じなのである。
アレルギーといえば、皮膚症状やくしゃみ、咳などが代表的である。
しかし実際にはアレルギー反応の種類は多岐にわたっており、必ずしもそのような症状ではない場合もある。
くしゃみや咳、皮膚症状などは出ないが、単純に「強い充血」を引き起こす場合もあるだろう。
もし、その充血反応を起こしている部位が「上咽頭」であったら?
上咽頭という、鼻のずーっと奥の突き当りの部分は自律神経に深く関係しているそうである。
その部分に炎症を起こす「上咽頭炎」という病気のひとは、パニック発作と全く同じような症状を起こすことがあるらしい。
パニック障害だと思っていたら、じつは上咽頭炎だった、というひとはけっこういるらしい。
上咽頭がなんらかの原因で強い炎症を起こすと、自律神経系の不具合を誘発し、パニック発作に至ることもあるという。
ストレスだ、脳の問題だ、神経の問題だ、こころの問題だ、とみんな言う。
もし、そうではなかったら?
単純に「機械的な反応」だったとしたら?
だからいま、もしパニック発作や自律神経の不調があって、とくにこれといったストレスに心当たりがないひとがいたら、試してもらいたいのである。
「甜茶」
である。
甜茶とはバラ科の中国茶の一種で、まるで砂糖が入っているかのように甘いお茶である。
そして幸いなことに、このお茶はノンカフェインなのである。
パニック持ちのひとはカフェインが苦手なことが多いから、その点でも安心である。
甜茶には、アレルギー反応の原因である「ヒスタミン」を抑制するはたらきがある。
いわば、天然の抗ヒスタミン剤である。
甜茶を飲むようになったら花粉症がマシになったという人もいるそうである。
もしパニック発作の原因がアレルギーだった場合は、いちばんの原因は「ヒスタミン」だということになる。
このヒスタミンの分泌を甜茶は抑えてくれるので、効果が期待できるというわけである。
しかし、おそらくその効果は劇的ではない。
じわじわと効いてくるタイプで、その効果もそれほど強いわけではないだろう。
おそらくは「弱いアレルギー」にだけ効くのではないかと思う。
強力なアレルギーには、効果がないかもしれない。
しかし、この「弱い」にこそ、ぼくはヒントがあると考える。
チカラには「つよい力」と「よわい力」の2種類があると思う。
「つよい力」と「よわい力」には、単純にエネルギー量の違いだけでなく、それぞれ独自の特性があるのである。
よわい力には、つよい力にはない、つよいエネルギーがある。
まあ、何言ってるかよくわからないけれども、パニック発作を引き起こす原因は、この「よわい力」によるものだと感じるのである。
「つよい力」によるものであれば、充血や軽い炎症などでは収まらず、激しい咳やくしゃみ、嘔吐、ひどい湿疹などの排泄反応が起こるはずである。
いっぽう「よわい力」によるものは、そこまでの劇症はなく、四六時中、ずうっと微妙な違和感と不快感を保持しつづけることになる。
この「よわい常時反応の蓄積」も、ひとつの原因ではないかと思うのである。
「つよい力」はまさに強力な力で直線的にわかりやすい攻撃をしてくるが、「よわい力」は、一見たいしたことがない攻撃でも、じわじわとながい時間をかけて徐々に生命力をすり減らしていくのである。
甜茶はおそらくこの「よわい力」に効くものではないかと思う。
だから「つよい力」によって引き起こされたアレルギーには、おそらく効かない。
たとえば、ぼくには猫アレルギーがあるが、これには甜茶はまったく効かないようである。
猫の毛を吸引すると、充血どころではなく、くしゃみ・鼻水・涙がとまらなくなって、正常な日常生活が不能になる。
これは「つよいアレルギー」だからだと思う。
しかし、ハウスダストによるアレルギーには、甜茶がかなり効果を発揮するようなのである。
喘息のような症状も消え、軽い皮膚湿疹、目の充血などが減った。
実際に、ぼくには「よわいハウスダストアレルギー」がある。
カフェインレスで、とくに副作用もないようなので、試してみる価値はあると思う。
甘みもあって、日常のお茶としても良いと思う。