健康体操としての「甩手(スワイショウ)」すなわち腕振り体操は結構有名かもしれない。
ただ立って腕を前後に振り続けるというシンプル極まりない体操だが、血行改善、肩こり解消、姿勢改善、呼吸の正常化、精神の安定などなど、想像以上に効果が高いそうである。
かつて健康法オタクだったぼくもこれは当然知っていたが、あまりやらなかった。
単純すぎてツマランというのもあったが、それよりも「情報源の怪しさ」が大きかった。
たんなる健康法だというのに、神秘化したり大層なご高説を垂れている人が多かったのである。
いわく、腕を上げる高さはみぞおちまでじゃないとイカン、絶対に数を数えねばナラン、腕を前に出すときは重心を後ろに、腕を後ろに振るときは重心を前に出さねばイカン、両手のひらは向かい合うようにして振らねばナランなどなど、イカンナラン、イカンナラン、うるせえのである。
なにを言うとるんじゃ。ただ腕を振るだけやろうが。
それだけならまだしも、しまいには「両手の間のエネルギーが」だの、「磁場が活性化される」だの「波動が浄化される」「運気が上昇する」だのといった神秘系のご高説には閉口せざるをえない。
なにを言うとるんじゃ。ただ腕を振るだけやろうが。
そのようなおかしなこだわりを見せ、妙ちくりんなことを触れ回るくせに、非常に肝心なことは完全にスルーしているのである。
じつはそれを抜かすと効果が激減するというのに、ヘンなことを言っている人はその部分を綺麗サッパリ無視していやがるのである。
肝心なこととは、「腕振り体操の前後には黙想を行う」ということである。
ただじっと立って目をつむり、呼吸を整えて、しずかに佇立するのである。
ほんの1分、いや30秒でもよい。
これをしないと、ぼくは個人的には腕振り体操の意味がないとさえ感じている。
あと、「両手のひらは並行」ではない。
手のひらは必ず下に向けて行うべきである。
とくに長時間(30分以上)これを行うつもりなのであればなおさらで、そうしないと肩関節や肘を痛める可能性もある。
手のひらを向かい合わせて並行にすると、親指が真正面や真上を向くことになる。
親指の先が真上を向くようにすると、肘関節は必ず真下を向くのである。
その状態で力を抜き腕をま後ろに振ると、遠心力で肘が伸び切った状態になり、曲がらない方向に力がかかる。
するとこれを無意識に回避しようとして、肩に余計な力を入れて微妙にねじろうとするか、肘が伸び切らないように無意識にすこし腕を曲げるように力が入る。
人体力学として当然のことで、これを利用したのが柔道の「腕ひしぎ逆十字」である。
親指が真正面や真上を向くと、肘の関節の行動範囲に制限がかかり、関節をとりやすくなる。この技をかけるときは、かならず相手の親指を鉛直方向に向けるように仕向ける。
だからスワイショウでは、手のひらは真下に向けるべきである。
そうすれば腕をま後ろに振ったとき、力を入れなくても自然に関節が自由に動いて肘や肩への負荷が分散されるのである。
短時間であればどちらでも良いが、一般的にスワイショウは30分以上継続して行うことが推奨されているから、このフォームは絶対に守ったほうが良い。
「手のひらを向かい合わせたときの磁場が……」とか「気が……」とか言っているのは、人間工学として完全に間違えているし、ウソである。
そういったことを、完全に正確に教えてくれている本やサイトはないものか、と探してみた。
「形や数のことばっかり」あるいは「人間工学的に誤っている」「神秘に毒されている」ものばかりだったが、やっと見つけた。
しかしそれは、中国の動画だった。
この先生は、とても正しく教えてくれていると思う。
腕を振る方向も安全だし、何より「前後に黙想を行う」ということもきちんと指導してくれている。
ぼくは、うれしかった。
こういった重大な「基本」が、どうして日本では正しく広まらないのだろう。
そして、意外なことも知った。
この動画のオリジナルかもしれないが、「5回に1回は、軽くスクワットをする」というのである。
実際にやってみたところ、これはけっこういいかもしれない。
腕ばかり動かすのでなく、たまにごく軽く脚の屈伸を行えば、気血の流れの改善にはより効果が高いかもしれない。
10分もやれば、若干汗ばむぐらいになる。
寒くなるこれからの季節、スワイショウはとても良い運動になると思う。