腹筋を開放せよ

中心脱力」という方法を行うと、アタマののぼせや息苦しさ、動悸、立ちくらみ、イライラや不安感、焦燥感などが大幅に改善することを発見しました。

せっかく発見したのに、ちょっとしばらく調子が良いと忘れてしまって、また「なんかのぼせる〜、グルジーよー、イライラするよー!」と文句タラタラ言っている。

我ながらこの徹底した「喉元すぎれば熱さを忘れる」お調子者傾向には若干の辟易感を否めない今日このごろなのであります。

 

さて、まあようするに慢性的に丹田とかコーモンとかに過剰な緊張があって、そのせいで血圧が上がったり呼吸が浅くなっていろんな不具合が出ていたようです。

いままで10年間以上、どんなお医者さんにかかっても、いくら精密検査をしても、ヨガをはじめ様々な民間療法を試してみても、何をやってもいっさいまったく改善しなかったのはこの「中心緊張」という状態をほとんど問題視していなかったからではないかと思います。

長年続けてきたヨガや自己整体をはじめ一切の方法を放棄し、ただ毎日20分間姿勢を正して座禅をするだけで大幅な改善が見込めたのも、おそらくは精神の安定によって丹田周りの緊張が解け、呼吸が深くなったことに大きく起因しているのではないかと思います。

 

ネットや本でパニック障害や自律神経失調の改善方法を探していくと「姿勢の改善」「背骨・骨盤の矯正」ということに行き着くことが多いです。

この「姿勢」「矯正」というワードは、じつは「魔法のコトバ」すなわち呪文なのです。

ほとんどの人は自分の姿勢をどこか誤っているような気がしていて、だから「姿勢が問題です」「歪んでいます」と言われたら「確かにそうかもしれん」と思ってしまう。

そして姿勢や骨格について、これまたネットや本でその改善方法を求めていくと、こんどは「筋力アップ」と「重心」と「歪み」いうことに行き着く場合が多い。

結果、筋トレやヨガ、各種運動など、筋力アップと身体のアライアンス改善のエクササイズに向かうようになる。

ここが「落とし穴」だったのでした。

たしかに、姿勢は良いに越したことはないでしょうし、筋力も強いに越したことはないでしょう。

だけど、からだの歪みや筋力低下が神経系の不具合に関係していないことのほうが、じつは圧倒的に多いのです。

もちろんそういう場合もないわけではないけど、でもそれはもはや病的なレベルの歪みや筋力低下の場合だけです。

ふつうに日常生活を送れているのであれば、神経系に異常を来すまでの重大な歪みや筋力低下は起きていないと考えるのが当然です。

というかこの全世界において「歪み」が一切ない人間や生き物なんて1匹もいなくて、むしろ「生き物だからこそ歪んでる」と考えるべきです。

なのに「姿勢」や「歪み」という呪文を受けてしまったら、その呪力にあてられて、あたかも姿勢や骨格の歪みが現在の不具合の中心原因であるように思い込んでしまうのが人間なのでした。

 

自律神経系の不具合は、直接的には「呼吸」が関係していることが最も多いような気がします。

というのも、自律神経失調症の代表的な不具合 —- のぼせ、動悸、冷や汗、息苦しさ、めまい、不安感、焦燥感、イライラなど —- は、そっくりそのまま「酸欠状態」の症状と完全に一致するからです。

思うに、何らかの理由で呼吸が浅い状態が長く続くと慢性的に身体が酸欠状態になり、そのせいで主に循環器系の症状が多発するのではないでしょうか。

病院に行ってもなんにも治らないというのも当然で、病院で治せるのは「身体」であって「呼吸」ではないからです。

神経組織や各種内臓などにはとくに問題が「ない」のであれば、どんな名医だって、何もできません。

 

なぜ、呼吸がおかしくなるのか。

その原因のひとつに、「姿勢」はたしかにあると思うのです。

しかし姿勢の悪化は一般に言われているように「重心のズレ」や「骨格の歪み」「筋力低下」などとはほとんど関係がないと考えるほうが自然です。

さきほども申しましたように、ふつうに日常生活が送れているのなら姿勢維持ができないほど筋力が低下していることはまず考えにくい。

また重心については、人間には三半規管という非常に高等な重心察知の器官があるので、ここに器質的な障害がない限りは重心を誤るということも考えにくいです。

もしほんとうに重心がずれているのなら、すぐさま倒れてしまいます。

ふつうに立ったり座ったり走ったり、あるいは日々の家事ができているのなら、重心のズレが姿勢を悪化させているというのは少し無理がある仮説です。

実際には、逆なのです。

姿勢が悪化しているために重心に偏りが生じ、そのズレた重心を本能的に補正するために身体の各部に不要な負荷がかかっている。

「身体の歪みを直せば万病が治る」などという考えは、もはや妄想と考えたほうが安全だと思います。

 

そしてこの姿勢の悪化、この大きな原因のひとつが「腹筋の萎縮」なのだと思います。

人間は、イヤなことがあったり、痛かったり、怖いことがあると、本能的に腹筋を硬直させます。

アタマは頭蓋骨で守られ、心臓周りは肋骨で守られているのですが、おなかには重要な器官があるというのにも関わらずまったくホネがない。

守るためには、筋肉を使うしかない。

心理的なストレスがかかると人間の本能は腹筋に「強く縮む」ように司令を送り、硬化させ、肉の鎧とするのです。

しかしこの状態が長らく続くと、慢性的に腹筋が硬化した状態になってしまう。

そうすると、息を吸うときに横隔膜があまり動かせないため、肋骨の拡縮だけで呼吸をするようになってしまう。

しかし残念ながら肋骨はあまり大きな動きができないため、換気能力が低い。

人間は横隔膜の上下を「メイン」とし、肋骨の拡縮を「サブ」として呼吸を行っており、サブ機能だけを用いているとどうしても酸欠になってしまう。

 

人間には知能があるため、未然のトラブルに対しても同様の反応をしてしまうのでした。

ほんとうはまだ起きていないし、起きる可能性もそれほど高くないのに、「もしかしたら」という想像だけでも人間は不安になることができる。

いまは存在せぬ妄想の刺激「だけ」でも、人間は腹筋を拘縮させ、呼吸を浅くできるシステムを持っているのです。

ちょい待てコラ、それ設計ミスやろうがコラ、と神様に文句を言ってしまいそうになるけれども、じつはこの「予測反応システム」があるからこそ、人類は種の生存機会を大幅に高めることができた。

あまり先のことを考えず、実際に起きたことにしか反応せず、不安もいっさい感じないような生き物なら、とうの昔に滅亡していたであろうと思われます。

ほかの生き物のように強い筋力や敏捷性、知覚能力があればまだしもですが、人類は肉体的には哺乳類「最弱」グループのポンコツだからこそ、知能を大幅に発達させてきたそうです。

知能は生存確率を高めるとても良い機能ではあったが、良いことには必ず悪い面があって、その悪い面こそが「妄想」だった。

学習能力が高すぎて存在しないものを妄想し、妄想上の対象にも恐怖を感じてしまう。

 

「妄想をしない」という努力も当然アリだけれども、人間であるかぎりそれを完璧に行うことはできないでしょう。

もしできてしまったらその人はもはや人間にあらず、人間でないということは、人間であることのメリットも喪失してしまうことになる。

もし全人類が妄想しなくなって不安も恐怖も感じなくなって上機嫌になってしまったら、人間という「種」はほどなく滅亡をするでしょう。

 

遥かなる未来にはそのような桃源郷があるのかもしれませんが、そんなムチャしなくても、この時代においては単純に「妄想による腹筋の反応」を「減らす」だけで充分ではないかと思うのです。

妄想するのは、しかたがない。

妄想で反応してしまうのも、しかたがない。

だって、にんげんだもの。

妄想と、妄想反応を「減らす」だけでいいのではないでしょうか。

 

いまじぶんの肉体に起こっている反応が、妄想反応かどうかは「それ必要?」と聞いてみればわかる。

コーモンを意識してみて、そのコーモンが必要以上に「キュッ」となっていたら、すでに妄想反応をしている。

そこまで締めなくても、うんこさんは漏れたりしないのです。

むしろ妄想反応で「締め続けて」いたら、コーモンの血行が悪くなって、痔とか脱肛の病気になってしまう。

何よりまずいのは、コーモンをキュっとしすぎたら血圧が高くなってしまうこと。高血圧のせいで、本物のまずい病気になるかも。

唇がヨダレをたらさない程度に閉まっていればそれで良いのと同様、コーモンはうんこさんを四六時中漏らさない程度に閉まっていればそれで良い。

それ以上の「キュッ」は、ただの妄想反応です。

 

腹筋も同じで、猫背、猫背と大騒ぎするけれども、おそらくほとんどの場合は腹筋が「妄想反応」によって萎縮しているだけだったりする。

腹筋の萎縮がとれたら、人間は「油断するとまっすぐになる」。

油断すると猫背になってしまうのは、それだけ腹筋が不要な拘縮をしているわけで、この不要な拘縮は「クセ」とか「歪み」とかじゃなくて「妄想反応」。

腹筋に「いま縮む必要、ある?」と聞いてみよう。

ほとんどのばあい、そんなにチカラを入れる必要なんてないから、腹筋は「あっ。いらねえや」って気がつく。

 

「姿勢を正そう」という意識は、とてもまずい。

姿勢を正そうと思うと、下腹にチカラが入ってしまい、コーモンも引き締めてしまう。

そうじゃない。

「腹筋を開放する」という意識のほうが良いようなのです。

人間は、油断すると、脱力すると、まっすぐになる。

どうしてもまっすぐに「なってしまう」のです。

なぜならば、人間とは「そういう生き物だから」。

背中を丸めているのは、力が弱いのでも、抜けているのでもない。

「妄想反応で腹筋が拘縮している」ことが、とても多いのでした。

 

ふだんから、ストレスにさらされ続けてきた結果なんだろうと思います。

世の中、うるせえからなあ。

あれしないとダメ、これしないとダメ、こうじゃなきゃダメ。

ダメダメ言うやつこそが、ほんとうはダメ人間なんですけどね。

ダメ人間どもにダメダメダメダメ言われ続けてきた結果、こころが「もう、ヤダ」ってなって、こころを守るために、腹筋が「キュッ」てなった。

 

あと、いまの世の中、すごくダサいんですよね。

「細いほうがカッコイイ」っていう、すげえ気色の悪い美意識が蔓延してるんですよね。

モデルさんみたいな白い、細い、弱い虫みたいな体型を「キレイ」とか、センスないよねえ。

ダサすぎるよねえ。

もちろん脂肪だらけで太りすぎてるのは大問題だけど、もっと腹ドーン、胸ドカーン、骨盤バーン、脚バチーン、みたいな「強そうな」カラダを、カッコイイって思おうぜ。

そのほうが、生き物として絶対に強いんだから。男でも、女でも。

ヒョロッヒョロの、もやしみてえなガイコツを見てコーフンするとか、それ変態ですから。

かっこよく見せたくて、おなかを「キュッ」てしている人も多いらしい。

わざわざ細身のズボン履いて、下半身の血をわざわざ止めている人も多いらしい。

ということはつまり、変態どもにモテるために、変態が好きな体型になって、カラダとか神経とか壊してやんのな。

変態じゃねえか。

 

コーモンも、腹筋も、むだに力を込めるべからず。

「具が漏れない程度」に締まっていれば、それでいい。

腹筋を開放すると、人生も開放される。

 

 

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