最近ふと気づいたことがあって、もしかして……と思って調べてみたら、ビンゴでした。
毎晩寝る前にヨガ(というかストレッチ)をしているのですが、どうにもカラダが妙に硬い日と、そうでもない日がある。
最初は疲労とか呼吸とか冷えとか歪みとか筋膜がどうとか、そういうことを妄想していたんだけれど、全然違った。
「硬い日」は気持ちがちょっと焦っていて、ストレッチを「急いで」しまっていたのです。
つまりは「こころの問題」「認知の問題」だったのでした。
たとえば長座体前屈(脚を前に伸ばして座って前に倒れる動作)をするとき、なぜか動きにくいと「うわっ、硬っ!」と思い、そこから一生懸命スジを伸ばそうとします。
スジを意識して、息をフーフー吐いたり、力を抜こうとしてみたり、さすってみたり、いろいろやるんだけど、中々伸びない。
で、「ううむ。今日は【硬い日】なんだな」
と結論し、あまり無理してもダメだと思い、やめてしまう。
そうじゃない。
「時間」だったのです。
筋肉は、最初の20秒間は「伸張反射」という反射によって「伸びない」ようにできている。
これは一種のABS(オートブレーキングシステム)みたいなもので、急に筋肉が伸びるとスジや関節を痛めたりするし、カラダの動きの制御がとれなくなったり、いろいろマズいことがあるので最初の20秒間は念の為ロックがかかるようになっているのだそうです。
だから、どのような体調の日であってもストレッチのやりはじめに動きが悪いのは「正常」だったのです。
しかし、どうも心が「はやって」いる時は、このたったの20秒間が待てない、もしくは非常に長く感じてしまう、あるいは「硬さ」を必要以上に感じとってしまうのです。
疲労とか呼吸とか冷えとか歪みとか筋膜とかそんな高度で難しい話ではなかった。
伸張反射の20秒さえ待てないほど、心が急いでいた。
人体は想像以上に「機械」だったのでした。
だからどんなに硬く感じる日でも、20秒待てば必ず伸びる。
「おわっ、硬っ、これ以上はもう曲がらないな」
と感じたポイントで、じっとしてとにかく20秒間「待つ」。
そうすると、本当に面白いことで、そこから「ズ・ズ・ズ・ズ……」とスジが伸びていくのです。
ポイントは「痛くはなく、突っ張って感じるポイントで待つ」というところです。
「痛いポイント」で待つと、筋肉は逆にロックを強化するので伸びないばかりか、スジを痛めてしまうこともある。
よく「息を吐くと筋肉が柔らかくなる」とか言うひとがいるが、あれはウソですね。
関係ないんだもの。
息を吸っていようが、吐いていようが、20秒待てば「必ず伸びる」。
人体は「そういうふうにできていた」のでした。
で、とはいうものの、20秒待てば無際限に伸びるかというともちろんそんなことはない。
長座体前屈で足の指に手が届かないほど硬かったひとが、20秒待っただけでオデコが足首につくほど曲がるわけはない。
ただしこの「20秒待ち」を繰り返すことで、かなり伸びていくことがわかりました。
最初の20秒で筋肉が伸び始め、ズルズルと曲げていっても、必ずまた「止まる」。
で、そのポイントでまた「20秒」待つ。
そうすると、またすこし「ズル……」と伸びるのでした。
これを繰り返していくと、最初に比べれば相当大きく曲がるようになるのです。
このようなことを毎日毎日繰り返していくと、いつの日にか「開脚180度パッカーン!」が実現するのでした。
思った以上に、人体は「機械」だった。
この正常反射を知らず、ただやみくもにグイグイ曲げようとしたり、息をどうのこうのしたりしても、全然伸びないから「ワタシ、体硬いんだ」で「終わって」しまう。
そうじゃない。
硬いのはカラダじゃなくて、ココロだった。
20秒すら待てない「走る心」が原因だった可能性が高い。
よく整体とかのデモンストレーションで、立って床に手がつかなかった人が、骨盤を何かグリとやったら床に手がつくようになった……というのがありますね。
あれもよく考えたら伸張反射を利用しただけの「手品」の可能性があります。
20秒とはいわず、それが仮に5秒、10秒だったとしても、1回伸ばそうとしただけも「伸張反射」はある程度解除される。
そのあとに、骨盤をゴニョゴニョやるふうなことをやる。
施術と称した「時間稼ぎ」のあと、柔軟体操をさせたら、あらふしぎ! 曲がるようになった!
みたいな、ね。
経験上、整体関係の諸々には詐欺まがいのことも意外と多いので、あまり過信しないことをオススメします。
柔軟体操のコツは「待つ」ことだった。
ヨガがココロに効くというのも、じつはこのことなんじゃないかと思ったりもします。
気だの呼吸だのチャクラだの自律神経だの、むずかしいことをいっぱい言っているけれども、じつは「根気よく待てるようになった」っていう、ココロの修行ができたからじゃないか。
ヨガの真髄は「待つ」ことと「根気」である。
もしそうだったとしたら、これはこれで、なんかいいなあと思います。
待てないのと、根気がないのは、どんなことにおいても悪影響が大きいので。
待てる人のことを「大人」という。