反共の轍

安倍元総理が銃撃されたというニュースのタイトルを最初にスマホで見たときは、フェイクニュースだと思いました。

日本で「銃撃」などということがあるはずもなく、んなアホな、というのが正直な感想でした。

 

当初は政治犯ではないかという憶測もあったけど、結局は統一教会への恨みによるものだったということがわかってきたようです。

「安倍元総理が統一教会と深いつながりがあると思い込み……」という報道があったとき、ぼくは「そうか、頭のおかしい人の思い込みによる犯行だったのか」と、すなおに思いました。

しかしどうも全体のニュースのトーンが気になったので調べてみたところ、山上容疑者が言っていることは必ずしも間違ってはいないことがわかってきました。

 

安倍元総理のおじいさんである岸信介元総理が統一教会を韓国から日本に招き入れたというのは、事実のようです。

統一教会傘下の出版社による「世界日報」の表紙に安倍元総理が取り上げられている号が存在していますし、あの悪名高い合同結婚式に祝電を送っていたという事実もあります。

安倍元総理とトランプ大統領を引き合わせたのは統一教会系の企業によるものだったという話もあります。

ここで話が終われば、そうか、じゃあやっぱ安倍元総理は統一教会と深い関係にあったんだな、という話になってきます。

 

でもやはり政治というか世界というのは、それほど単純ではなく、もっともっと根深い問題があったようです。

近代日本の歴史は反共の歴史といっても過言ではないところがあるようなのです。

世界大戦後、敗戦国である日本には「共産化」の波が押し寄せていました。

学生運動もそのひとつだし、旧国鉄や逓信局(郵便局)の労働組合、日教組、連合赤軍など、日本を共産化しようという動きが顕著だった時期があります。

この動きは日本だけでなくアメリカでも同様に共産化のムーヴメントはあって、両国とも共産主義の台頭に目を光らせていたようです。

共産化というのは簡潔に言えば「財閥解体」ともいえて、資本の一極集中を構造的に破壊してしまい、富の分配を平等に行うという思想です。

そのような思想がもし日本で適用されたなら、天皇制は当然廃止となり、貴族華族出身の政治家や財閥、大企業などは全部解体されて無一文になる可能性がある。

これはどうあってもダメ、絶対に防がねばならないという指向性が日米の政府にはあった。

 

当時は大学生などの若年層までもが「赤化」をしていっていて、これに対抗しうる反共組織の立ち上げが急務でした。

そこで利用されたのが韓国発祥の「勝共連合」で、この母体がかの統一教会だったのです。

これはぼくの推測ですが、この勝共連合はおそらく米国CIAの協力があって出来上がったのではないかと思います。

もともと統一教会は政治色などなにもない、独特の教義はあるものの純粋なキリスト教系新興宗教でしたが、朝鮮半島内では破竹の勢いで勢力を伸ばしていて、おそらくこの組織力にCIAは目をつけたのではないでしょうか。

連合赤軍や学生運動などでは、まるで軍隊のような指揮系統で一丸となって命がけで作戦行動を行います。

これら共産勢力に対抗しうる、徹底的に統一された組織を作るのは、政府をもってしても生易しいことではなく、「宗教団体」を利用するのが手っ取り早いです。

宗教団体は信者を洗脳し、教祖や教団幹部の命令通りにまさに「命がけ」で行動させるので、これを利用しない手はないのです。

そこで「君たちの教団が共産主義に対抗する団体を作り、反共政策に協力するのなら、我々は君たちの布教にも協力するし、援助も行おう」という密約があったのではないか。

韓国内で生まれたこの勝共連合は、ときの韓国政府をも動かして「反共法」という法律まで制定させたという実績があり、「反共」ということでは非常に有能な組織だったようです。

 

絶大な行動力と強靭な組織力を持った反共組織「勝共連合」は、日本にも「輸入」されました。

この立役者が安倍元総理のおじいさんの岸信介氏でした。

一説によると、岸信介氏が日本に勝共連合を立ち上げるために黒幕として立ち回ったのが児玉誉士夫という人物で、この人はCIAのエージェントだったという話もあります。

児玉誉士夫氏がほんとうにCIAエージェントだったか、ことの真偽はさておいても、ときの政府にとって「反共」は最重要事項の急務であり、どのような手段を講じてでも日本の「赤化」を食い止める必要があったのはまず間違いありません。

理の当然というか、日本には勝共連合と一緒にその母体である「統一教会」も輸入されました。

じつは国内でも独自の反共組織を作ろうとしたそうなのですが、世界大戦前に大本教など組織力の強い巨大新興宗教団体を政府が自ら撲滅したこともあり、国内には反共のために機動的に活動しうる組織力を持った宗教団体は存在していなかったようです。

しょうがないので、既存の反共組織を海外から輸入するしかなく、勝共連合に既存の日本の宗教団体を加入させることによって拡充を目指すことも視野に入れていたようです。

 

もしぼくが、当時の政治家だったら……と考えます。

おそらく「国家の赤化」というのは、それはもう、どうあっても食い止めなければならないと考えたでしょう。

天皇制は廃止され、華族貴族も解体され、財閥も大企業も解体される。

これはすなわち明らかな「国体の崩壊」ともいえます。

第二次世界大戦では負けたものの、必死の努力でなんとか国家存亡の危機はいったんは乗り越えたというのに、次に押し寄せた脅威は「赤化」だった。

ここで「負け」たら、日本という国は、本当になくなってしまう。

時の為政者ならば、決死の覚悟でこれを食い止めようとするのは当然だろうと思います。

プライドなんぞ、かなぐり捨てて、「使えるものはなんでも使う」という判断をするでしょう。

アメリカにとっても日本が赤化してしまえば中国・朝鮮・ソ連などの共産圏との対峙という点で大きなデメリットを負うことになり、日本に米軍の基地は配備できなくなってしまいます。

アメリカは日本における勝共連合の立ち上げに、全面的に協力したであろうと予想されます。

既存の勝共連合を拡大させれば、アメリカとしては共産圏に対し韓国と日本という巨大な「防波堤」を持つことになるからです。

勝共連合の立ち上げにCIAが加担していたというのは、あながち陰謀論とはいえないのではないでしょうか。

 

このストーリが事実に近いとするならば、今回の安倍元総理銃撃事件は「反共の轍」ともいえるのかなと思いました。

山上容疑者が言うように「統一教会さえ日本に入って来なければ」という悔恨は、心情としては理解はできます。

しかし当時アジアで唯一有効な反共組織を持っていた統一協会を日本に招き入れることは、思想的国防という点では致し方のないところがあったのではないかと思います。

だから「岸信介のせいだ」というような難癖の付け方は、すこし突っ込み方が浅い気がしないでもないです。

もし根源的な敵視を持つのであれば「共産主義」に対するべきだったのかもしれません。

日本に赤化の波が押し寄せてこなければ、勝共連合も統一教会も、日本に入ってくることはなかったのです。

 

別件で思うのは、このへんのことについて、自称「右寄り」のひとたちはどのように考えるのでしょうか。

韓国のことをボロクソに言って、けなしているけれども、自民党の成り立ちそのものが韓国発祥の勝共連合を抜きにしては語れない。

片方の手では安倍元総理を神格化しながら、もう片方の手では韓国を蔑むというのは、やっていることがわかりません。

それに「反共」という思想を伏せ、あたかも日本の利益のみを考慮していると国民に思わせることじたいも、反共政策の一種ではないかと思ったりします。

韓国と日本が民族的に敵視しあっていると国民に思わせておいたほうが、政府や米国と反共組織の深い関係を誤魔化しやすいからです。

自称右翼、あるいはネトウヨと言われているひとたちは、自らが信奉している政治団体に「踊らされている」ということは、ないのでしょうか。

 

とか、まあ、最後のほうは妄想が入ってしまいましたが。

いずれにせよ、ぼくはウヨクでもサヨクでもなく「ムヨク」でありたいなと、切実に思います。

国破れて山河あり、城春にして草木深し。

イデオロギーなんぞ、クソ喰らえなんじゃ。

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