ジーンズの糊は落とすの落とさないの

ジーンズを生デニム(リジッド)から育てるのが、わりと好きです。
今年はリーバイスの501を育てはじめました。
 
新品のジーンズを買ったときに、いつも迷うことがある。
いわゆる生デニムというのは新品の状態では糊がついているのですが、
「糊は先に落とすのか落とさないのか」
ネット上でもいろんな説があって、雑誌によっても方針が違うことがあります。
もはや「永遠の課題」といっても過言ではないかもしれません。
 
しかしこの件について、今回ぼくはある種の結論を得ました。
「みんながどう言っているか」ではなく、「そもそもなぜ糊がついているのか」「ジーンズ繊維の特性は何か」という方面から考えると、必然的に1つの方法に帰結するのでした。
結論から言うと、以下のとおりにするのが良いと思います。
 
・まずぬるま湯で糊は先に落としてしまう。
・濡れたままのジーンズを履き、履いたまま乾かす。
 
まあはっきり言ってジーンズなんてものは作業着の一種なんだから、どっちでもいいといえば、どっちでもいい。
でもやっぱり「ちゃんと理解しておきたい」というのは、どうしてもありますよね。
さまざまな諸説は結局、大きく分けると以下の2流派に集約されます。
 
流派1.糊は落とさず、新品のまま2〜3週間(半年以上という人もいる)履いてから洗う。
流派2.先に糊落としをして、よく乾かしてから履き始める。
上記1の流派に属する人は、数週間履いた後に、ジーンズを履いたまま風呂に入り自然乾燥させる、という人もいます。
 
なぜこの「糊落とし」について諸説あるかというと、その後の色落ちに関係するからだというのが主な理由です。
糊のついた生デニムは硬いのでシワが固定されやすく、メリハリの効いたよい色落ちになるという論拠です。
しかしよくよく考えてみると、これはあまり科学的とはいえなくて、むしろ間違っているのではないかとさえ思えます。
 
まずそもそもの話、なぜ生デニムには糊がついているのか。
それは「生地を織るときに必要」だからです。
布はなんでもそうですが、機械で織るときに、縦糸はしっかりピンとしておかないとキレイに織れないのです。
木綿のようなフラフラの糸は、引っ張ってもそんなにまっすぐにならないし、引っ張りすぎると切れてしまいます。
そこで木綿を織る場合には縦糸に糊と少々の油を含ませ乾かし、ピンとさせる必要があるのです。
これはジーンズに限らず、柔道着なんかでも一緒です。
生デニムに糊がついているのは、生産的な理由なのです。
だから、糊は履き始める前に一度洗って落とすのが本来的なのです。
糊はあくまで生産者側の理由であって、消費者側の理由ではないからです。
 
また先に糊を落としたほうが良い理由は、もうふたつあります。
第一に、生デニムというのは一回も洗っていない布ですから、洗えば当然縮みます。
リーバイスの生デニムなら1回洗っただけで丈が6cm以上縮むこともあります。
もし糊のついた新品のまま履き始めたら、どうなるか?
糊は確かに「シワを固定する」。
しかし、1回洗ってしまえば大きく縮むわけ、せっかくついたシワの位置は大きく変わってしまいます。
未洗いのまま色落ちするまで履いてしまったら、洗ったらシワの位置は数センチもズレてしまい、まったく別の場所で新しいシワが生成されることになる。
せっかく「メリハリの効いた色落ち」を目指しているというのに、結果的には複数箇所にムダなシワを生成して、ぼやけたシワをわざと作ってしまうことになるのです。
第二に、糊のついた布というのは、硬いです。
硬いとうことは、柔軟性がないということです。
糊でカチカチになったのものを強引に履けば、繊維が切れてしまう可能性が高くなります。
そうなるとジーンズじたいの剛性をかえって失ってしまう。
適度な柔軟性があるからこそ、強靭さは保持されるのです。
以上のような理由から、糊のついたまま履き始めるというのは、非常に非科学的であると言わざるを得ません。
 
あと、これはぼくも勘違いをしていたのですが、
「布は乾かすときに縮む」
これは、じつは間違い。
ほんとうは、布というのは「濡れたときにこそ縮む」のでした。
雨の日に、くせ毛がバクハツして困る人もいるでしょう。
天然繊維というのは人間の髪の毛と同じで、濡れるとクセが強く出るようになる。
まっすぐであっても湿気を帯びるとクセが強くなって、縮んでくるのです。
だからほんとうの「縮むメカニズム」は、こうなります。
濡れて繊維が収縮する → 乾燥することで繊維の収縮が固定化される
乾燥機にかけると非常に縮むのは、重力があまり働かない(引っ張る要素がない)空間において短時間で一気に水分を蒸発させてしまうので、自然乾燥よりも「もっと自由に妨害なく縮む」ことが考えられます。
濡れたままぶら下げて干せば、繊維に自重のテンションがかかり、収縮を阻害するのです。
乾燥機の場合は乾燥強度も高いため、よけいに収縮を固着させる力も強いでしょう。
ただし乾燥によって固着した収縮は濡らすことで繊維が軟化し、伸ばすことも可能になります。
 
・糊はシワを固定化させる
・糊は繊維の柔軟性を失わせ、壊れやすくする
・生デニムは、濡らすと縮む。
・濡れたときに収縮はするが、濡れたままの状態では、ある程度伸ばすことも容易である。
・シワは乾燥することによって固定化される。
 
これらの特性を考えると、正しい方法はひとつしかないのです。
まず水やぬるま湯で、糊はしっかりと落としてしまう。
できれば完全に糊を抜くために、漬け置きでなく、洗濯機でしっかり回したほうがいいかもしれません。
ただし、脱水はそんなに強力にはしない。
しずくがボトボト垂れない程度の、びちょびちょのままにする。
濡れた瞬間に布は収縮をしはじめるけれど、脱水を強くしてしまうと繊維が柔軟性を失い、伸びにくくなってしまうからです。
そのまだ濡れそぼったままのジーンズを、そのまま履いて生活をする。
まだ水分で柔軟性を保持している状態なので、抵抗が強く伸びる必要があるところは伸び、抵抗が少ない縮んでも良いところは、フリーに勝手に縮んでいく。
完全に乾燥するまで履くとまさに「シュリンク・トゥ・フィット」、体系や動作に即したカタチに収斂していくわけです。
 
・糊は完全に抜けているのでゴワゴワ感は少なく快適
・そのかわりに繊維が柔軟性を取り戻すので、木綿本来の「強度」はアップする
・じぶんの体系や行動パターンに沿って収斂するため、履きやすい形状になる
・すでに収斂しており、体系に即した形状なので、ひとたびついたシワがズレる可能性は低くなる
 
糊先落とし・濡れママ履き乾燥には、こういったメリットがあるのです。
実際、今回はこのとおりにやってみました。
すると、今までで最速で「じぶんにピッタリのジーンズ」になりました。
まだ1日目なのに、もう数週間履き続けたかのような、そんな馴染み感があります。
 
繊維には、繊維の特性がある。
こういった「科学的生デニム育成法」というのも、なかなかおもしろいなと思いました。
まあ、とはいえただの作業着なんですから、どっちだっていいのですけどね。
新品から糊のついたまま半年履いたってなんの問題もないですし、それはそれで、正しい方法だと思います。
 

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