在宅勤務はもう、特別じゃなかった

ぼくは35歳のときにパニック障害を発症して、会社をやめ、独立して自営になりました。

いつ・どこで・どのタイミングで発作が起こるか一切読めないから、「勤務する」ことがもう無理だと判断したのです。

幸いWebデザイン業界だったので、在宅勤務と相性が良かったところもあります。

その後「自分で営業し、自分で作る」というこだわりを捨ててしまって、下請けに入って「つくるひと」に徹するようになってからは、ほぼ100%自宅で仕事ができるようになりました。

 

在宅ワークに至った経緯が経緯なので、ぼくはじぶんの仕事スタイルはかなり特殊なもののような気がしていました。

また家で仕事をするというのは副業のイメージも強く、いわゆる内職的なイメージも持っていました。

たとえば、取材テープをパソコンで文字起こしするとか、エクセルなんかに数値データを打ち込むとか。

「本職」ということでいけば、家で仕事をするというのは小説家や漫画家、一部の士業など、かなり特殊な分野のような気がしていました。

 

もう、そんなことはないみたいですね。

出社はしないで在宅で仕事をする「テレワーク」を認めている会社は、2015年時点で16%ぐらいだったそうだから、2019年の今はもしかすると20%ぐらい行ってるかもしれません。

アメリカなんかは85%以上がテレワーク制度を導入しているそうだし、ヨーロッパでは30%前後の人々が何らかの形でテレワークを行っているのだそうです。

テレワークを導入したものの、従業員がムチャクチャしだしたからやめた、という米Yahooのような事例もあるようだど、全体としては推進されていく方向にあるようですね。

考えてみれば、テレワークがもしうまくいけば、会社にとっても利点があるのです。

事務所をいちいち構えなくていいので、コスト削減になります。

今日本が働き方改革を推奨しているのは、このテレワークもひとつの要素として考えているかもしれないですね。

 

そういえばぼくの知り合いでけっこう若い人ですが、

「入社式以来、会社には一回も行ってません」

というひとは何人かいます。

IT系の会社では、テレワークはもっと比率が高くなっているようです。

 

こうなってくると、ぼくはもはや「特殊」ではなくなったんだな、と思いました。

いまから10年前は「男のくせに在宅ワークなんて」みたいな風潮が若干ありました。

本職で在宅勤務というのは、あまり見かけなかったものです。

 

変な話、ぼくはうれしいです。

正直な話、すこしだけ「負い目」のようなことも感じていたのです。

ちゃんと満員電車に乗って出勤して、ちゃんと上司に愛想を振りまき、ちゃんと部下にムカつかないと、ちゃんとした社会人ではないような気がしていました。

ぼくの仲間が、増えてきたんだ。

なんか、うれしい。

 

あと、これはもう言っていいのか悪いのか、いや、はっきり言って悪いですけど、

ようこそ地獄の一丁目へ

とも思ったりします。

在宅ワーク、テレワークという言葉には、なぜか「自由である」というイメージがセットのようです。

また、在宅ワークを推進することが過労死を防ぐ有効な手段だという人もいます。

なーんもわかっちゃいねえなあ!

そんなわけねーだろ、っちゅうの。

 

家で仕事をするって、想像以上にストレス溜まるんですよね。

会社に行けば、うっとおしいやつもいるけれど「味方」もいます。

同じことを考えている人も、けっこういる。

そんな人たちと一緒に、愚痴を発散しにたまに飲みに行ったりもできます。

いがいと会社では無意識に「傷のなめあい」をけっこうしているんですよね。

 

在宅ワークになると、そんなのはありません。

家族といえども、じぶんの仕事の苦労はわかってくれないのですよ?

もし奥さんや子供がいたら、きっと責められると思います。

「ちょっと! せっかく在宅勤務になったんだかから、子育てとか家事とか手伝ってよ!」

とかね。

うるせえ、とかいうと「家族の気持ちも理解してよ!」とかいって泣き出す。

泣きたいのは、こっちだっつうの。

在宅勤務になったからといって、仕事が減ったわけじゃねえ。むしろ増えたぐらいだ。

それにそもそも、てめえのことを理解してほしければ、おれのことも理解しろや。

家にいるからってヒマなわけじゃねーんだぞ!

 

……っていうグチが、必ず吹き出す。

で、思うようになるんだ。

「会社って、よかったな」

仲間がそばにいるって、じつはとても、ありがたいことなのです。

仕事の苦労は、家族には決して理解してもらえないものです。

出勤のスレトスも確かにたいへんだけど、在宅のストレスもまたひとしおであります。

ある意味、孤独という「根源的なストレス」を抱えることになっていきます。

そしてそのうち、自律神経を壊しはじめる。

些細なことにイラつくようになったり、風邪でもないのに熱が出たりして。

引きこもりに近い状態になっていく人も増えるでしょう。

このストーリーを、会社や国家はどこまで理解しているだろうか。

在宅ワークを志願する人が、どれだけ理解しているだろうか。

 

たぶん、一時的に在宅ワークの普及率はぐーんと伸びると思います。

例の「スタンディングデスク導入」のように。

我が社は社員にやさしい会社ですよ、福利厚生にチカラ入れてますよ、先進的な取り組みをしていますよ。

そういうことを広告したいがために、流行っているものをミーハーに導入します。

でもそのうち、デメリットに気が付き始める。

こりゃコントロール無理だな

1〜2年のピークを過ぎたら、テレワーク導入の比率はまた、下がっていくでしょう。

 

ひとは、ひとりでは、働けない。

オンラインでつながっていたって、だめなんですね。

そういうことじゃないんだ。

同じ目標を持って、同じほうを向いている人が、「いつも」そばいにいないと、キツいのです。

一人っ子で孤独耐性が強いぼくでさえ、まあまあキツいです。

 

在宅ワークを導入するなら、「ギルド」が必要になてくるんじゃないかな、と思ったりします。

みんな会社に所属しているけれど、別に地域の「職能ギルド」にも所属するのです。

建築業とか、デザイン業とか、出版業とかの、業界横断型のギルドがある。

在宅ワーカーはそこに所属して、情報交換をするのです。

もちろん秘密事項もあるだろうから、そこは個々人で管理をしなければなりませんけどね。

ただ情報と言っても、仕事の情報というよりは「愚痴の共有」ですかね。

この業界って、このへんがつらいとこですよねー! みたいなのを、みんな言いたいはずなんだ。

で、たまに飲み会とかすんの。

大きなギルドだったら、お金をあつめて基金つくって、ギルド社会保険とかも作ればいいよ。

楽しそうだなあ。

「Webデザインギルド」ぼくがつくろうかな。

 

 

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