肥田式強健術という、明治時代の身体鍛錬法では、強く腰を反らせることを推奨します。
いや、これ、いくらなんでも反らせすぎなんじゃないの?
おなか出てるじゃん!
かっこ悪いじゃん!
……と、現代人である我々は、そう思ってしまいます。
こんなに反らせたら、むしろ腰に悪いんじゃないの?
とも思う。
しかし解剖学的に考えて、これはじつは、「とても正しい姿勢」なのではないか、と思ったりもします。
大腰筋は、骨盤と腰椎全部、それと大腿骨を結ぶ強大な筋肉です。
大腰筋の、ものすごい発達。
これを感じるのであります。
肥田春充氏の姿勢をみて、ぼくは印象として真っ先に「原住民の姿勢」を思いました。
いわゆる「原住民」と言われる人の腰って、かなり反っているようなイメージがあるんですよね。
ギャギャッ、と腰が入っている。
この肥田春充さんという人は、身長は160cmにも満たない小柄な人だったようですが、超人的なパワーを持っていたのだそうです。
とにかく格闘技系では負け知らずだったようです。
超人的なパワーの源、それがもしかすると、この大腰筋の異常なる発達だったのではないのかな。
ぼくたちの美意識が、もうどうかしてしまった可能性もあります。
ぼくたちはどうしても、こういう人をカッコイイと思う傾向があります。
しかしこういう体型は、東洋医学では「イヌの腹」といわれて、あまりよろしくないと言われるそうです。
神経質で小心で、体力がない腹だと言われたりする。
むしろ出っ腹のほうが、健康的にも人格的にも体力的にも良い、という話もあります。
社会心理学的に、ぼくたちが美しい、かわいいと思うのは、結局は周囲の情報に「完全に」左右されるのだそうで。
テレビや雑誌で「これが美しい」と断言されたから、そう思っているだけの可能性もありますね。
よく反った腰。
突き出してせり上がったお尻。
これはセクシーであるともいえます。
本能的に、何かをグっと感じる。
その点、最近の女性のモデルさんたちはみんなスマートだけど、言い方を変えれば、貧相であるともいえるんじゃないか。
平な腹、平らな尻。
全体として、うすっぺらい、細長い。
立体性と機動性と躍動感を、全く感じないです。
ひょろっひょろだ。弱そう。
それに比べて、
見よ! このたくましさを。
立体感と躍動感を。生命力の輝きを。
強そうじゃないか。
喧嘩したら負けるぞ。相手が女の子でも。
どっちが「美しいか」でいけば、ぼくはだんぜん、原住民の女の子たちのほうが美しいと思う。
いまのモデルさんたちはみんな、白い虫みたいなんだ。
なにも感じない。
自然当然な発育をすれば、じつは腰は反ってくるのではないのかなあ。
そしておなかが、ドンと出てくる。
もちろん、ビール腹じゃなくてね。
大腰筋や腸腰筋の円満なる発育が、腰を大きく反らせるのかもしれませんよね。
肥田式は腰を痛める、という話もちらほら耳にします。
これはどういうことかというと、
大腰筋の鍛錬ができていない者が、カタチだけ真似るから腰を痛める
ということなんだと思います。
この形状は、強大なる大腰筋と腸腰筋あってこその姿勢。
だからちょっとやってみて腰イワしたから、肥田式は間違えているというのは、ちょっと違う気がする。
蛇口をひねれば水が出て、風呂をわかすのもボタン一発。
バイクや車、電車やバスで移動して、すぐにエレベーターやエスカレーターに乗る。
じぶんで狩りをすることもなく、スーパーやコンビニで食材を買う。
何かあったら、座ってばっかり。
家ではテレビやビデオをゴロゴロしながら見て、本やマンガを読み、運動と言ってもせいぜい10kmほどをひょろひょろ走ったり歩いたりする程度。
そんな弱い人間が、大腰筋の超絶なる発育をした人の格好を真似たら、そりゃあ腰イワすだろうが。
鍛えてみようと思う。
大腰筋。
そして、ぼくがいまカッコイイと思っている体型を、一回捨ててみようと思うのです。
やっぱり「ほそいお腹」は、ぜんぜん美しくない。
むしろ醜い。貧相なんだ。
円満なる、強大なる腹(ビール腹じゃないほうの)。
それは生命力の、あかしかもしれないですよね。