逆の手で、未来ブロック

パニック障害やウツ、不安神経症っていうのに共通するのに「未来志向」があります。

先のことをつい考えしまって、それもよけいな、まちがったことを考えてしまって、それを心配したり悩んだりしてしまう。

 

パニック発作なんかは、その典型ですね。

最初は、なんか微妙なカラダの違和感なのです。

なんか息苦しいなあとか、ちょっと動悸がしたなとか、フラっときたな、とか。

そういう違和感を感じたときに、まず「病気かな」とか少し想像してしまうんですね。

そしてその症状がなかなか治まらないと(「なかなか」とかいっても、じつは1分も経ってないんですけどね)、怖くなってくる。

そして、こう思う。

このままいくと、ヤバいかも。

 

ここ!

ここなんですよね。

「このままいくと」

が、非常に強いアクセルになっているのです。

このままいくと……というのは「意識が未来に向いてしまっている」ということなんですよね。

 

そして、もうひとつあります。

カラダに違和感が生じたり、あるいは不安になったりしたのには、「原因」があるのではないか、と考えるのですね。

きのう食ったもの、きのうしたこと、いままでしてきたこと。

こんどはそのあたりに、意識が向かう。

もしかしたら、きのう寝不足だったからじゃないか……とか。

これは逆に「過去に意識が向いてしまっている」。

 

意識が現在から突如未来や過去にワープして、そのなかにあるかもしれない、あるいはあったかもしれない「可能性」を、いっしょうけんめいに探そうとしてしまうのですね。

未来や過去に思いを馳せることじたいは、だれにでもできることだし、人間ならではの機能かもしれません。だからべつに、異常とかではない。

異常なのは「それがヒドすぎる」という、過剰の部分ですね。

 

つい、過剰に未来や過去に意識が向かう。

この根本原因はもちろん恐怖によるものなのですが、未来や過去に意識が過剰に向かうことによって、恐怖がいちだんとパワーアップされているところもあります。

パニック発作そのものの中核は、むしろ未来への不安です。

このままだと死ぬ、あるいは、重篤な病かもしれない、など。

 

話はきゅうに変わりますけど、以下の動画がすごく面白いのです。

せとこうじさんというYouTuberの方の動画で、「『ウツを一発で治す方法』に共感できたのでちょっと語ってみる」というものです。

ポイントとしては、

利き手と逆の手をよく使うようにすると、不安や恐怖が減る。

理由は、苦手なほうを使うと意識が「いま」に集約されるからである。

ということです。

右脳・左脳の話もあって、右脳は現在を司り、左脳は未来と過去を司るという説も紹介されています。

未来や過去を意識しすぎてしまうのは「左脳主体型」だからだ、という。

右脳・左脳理論は諸説あっていまだ仮説の域を出ていないという話もあり、最近の研究では「左右関係なく脳は全体的に使用されている」という話もあるので、それはどうなのかわかりません。

じゃあ左利きの人にはウツもパニック障害もないのか、っていう話になってしまうし。

論点は、そこではないですね。

意識の軸足が、現在にあるか、過去と未来に飛んでいるかということが重要なんだと思います。

確かに、パニックや不安障害、ウツになる人というのは理屈っぽいひとは多いです。

論理的思考ができる人でないと、むしろこんな病気にはなれません。

ものごとを理屈で捉えようとする傾向が強く、理屈に納得がいかなければ腑に落ちない、というような側面もあるかもしれません。

理屈っぽいからこそ、過去や未来に意識が飛びやすいんですよね。

これが、こうなったから、あれがああなって、こうなった。

そのような演繹思考でものごとを捉える癖があるから、なにかトラブルが起こるとすぐに「原因はなんだ」「このままいくと、なにが起こるか」を考えてしまう。

これが不安を必要以上に強化していってしまうんですね。

 

実際に、普段は右手で使うマウスを左手に持ち替えてみると、気分が変わります。

右手で難なくできていたことも、左手だとまったくうまくいきません。

文字列を選択するのにも、ウィンドウの「×」ボタンを押すのにも、かなりの集中が必要です。

洗濯物を干すときに洗濯ばさみを左手で扱うとか、洗い物のスポンジを左手で使うとか、そんなことでも同じような効果があります。

「やりにくいから、集中してしまう」というところに、ポイントがあるのかもしれませんね。

ほとんど無意識にできてしまうことが多いからこそ、意識のエネルギーが過去や未来に漏洩していくというのは確かにあるような気がする。

むずかしいと、意識のエネルギーが漏れていかないんですよね。

「いま、ここ」「いま、これ」にどれだけ集中できているか。

これこそが、未来への不安を低減させるコツであることは確かです。

 

過去も未来も「いま」の蓄積なんだから、「いま」をしっかり生きていないようなやつに、よい未来がくるわけはありません。

先のことを心配したり、考えたりしたぐらいでトラブルがなくなり、人生がうまくいくのなら、だあれも苦労せんっちゅうの。

いま、していること。

それだけが、未来の基礎だ。

 

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