いぜん「不安は無知から」という記事を書いたときに、「『安心』を処方するお医者さんがもっと増えればいいのに」ということを書きました。
母がお医者さんに高血圧(ウエが180)といわれて、むちゃくちゃ気にして眠れなくなり、ヨボヨボになってしまった話です。
しかし血圧の基準値は年々変わってきていて、もし20年前なら、血圧が180だったとしても、それほど高血圧でもなかったということを母に伝えたところ、いっぱつで元気になったのでした。
だからお医者さんには、薬で治すだけでなく、こころで治すことも考えてほしいものだと書いていたのでした。
いた。
いたよ。そんな先生。
健康マニア、何が楽しい 体にいいことばかりやってて疲れない?
この本の内容を思い切ってひとことで言えば、
健康を気にするようなやつはアホじゃ
ということです。
それも、現役のお医者さんが言ってる。
この新見先生は、一時期テレビにもよく出てた先生のようです。
なかなか思い切ったことをおっしゃるんですよね。
・心配性のひとは人間ドックなんか行くな
・イヤなら無理に運動すんな
・酒もタバコも、やめなくてよし
・免疫とかいうコトバに騙されんな
・健康法は話半分で聞け
・人生は長生きしたヒトじゃなくて、楽しんだヒトが勝者だ
などなど。
一貫している思想は、最後のやつです。
人生は長生きしたヒトじゃなくて、楽しんだヒトが勝者だ。
どうせ死ぬんだから、健康なんか必要以上に気にするな。
健康は「人生を楽しむためのツールのひとつ」なのであって、「絶対条件」とかではない。
気にしすぎたら、治るもんも治らん。
まあ、こういう話は、たまに聞く話ではあるんですよね。
でもぼくは、これを正規のお医者さんが言っていることに絶大なる意味があると思いました。
最近のお医者さんってばもう、「薬と心配を売るのが仕事です」みたいなひとも多いんですよね。
もちろん、お医者さんなのにあまりにもジャンボリーでいい加減というのも困りますけど、それにしてもひどすぎると思うことが多いです。
とくにパニックや自律神経失調症なんかになってくると、ものすごく大真面目に、難しく大変だみたいな雰囲気で話をするくせに「原因は結局なんなんですかね」と聞けば、
それはわかりませんね
なんじゃそら。
なんじゃそらっ!
よくわからないんだったら、せめて安心させてくれよなあ。
こっちもわかんねえ、先生もわかんねえってなっちゃったら、もうほんとにわけわかんねえって。
不安な気分が問題のひとに対して、不安を助長させてどうするつもりやねん。
だからこういう先生っていいな、と思うんです。
もちろん、強引で無茶なことは書いてませんよ。
健康法を全否定しているわけじゃないんです。
とにかく気にしすぎないほうがいいです、っていうことを、いっぱいことばをつかって書いてくれてます。
たとえば更年期障害にしても、「割切るしかない」としたうえで、
人は生まれ落ちたときからすぐに更年期が始まっていると僕は考えています。「更年」というのは年を取るという意味ですから、オギャーっと生まれた瞬間から死ぬまでが、ずーっと更年期。だんだん衰えていくのは仕方ないのです。
ここまでスパっと言ってくれると、すがすがしいです。
ぼくはパニック障害を10年以上治そうとして努力してきたけど、悟ったことがあります。
治そうとする努力もまた、りっぱなストレスである。
ストレスが問題だ、つってんのに、治したいっていう欲を持つことで、またストレスを増やしちゃってんのなあ。あたまわるいなあ。
治したいって思うってことは、悪化させたくない、っていう気持ちと同じです。
だからどんどん、いろんなことに消極的になっていってしまうんですね。
アレをしたら悪化するんじゃないか、コレを食べて悪くなったらどうしよう。
じゃかましいわ。
そーゆーふーにいちいち考えることじたいが、いちばんのストレスだっつってんの!
自分でかってにストレス増やしてやんの。ばかじゃねえ。
でもそうなってしまうのも、ネットや本で情報を掻き集めたことが原因なんですね。
世の中にある有象無象の健康法に接したおかげで、ウソかホントか実証不能な仮説まで信じてしまったりする。
あっちでは良いといい、こっちではわるいという。
そんな相互に矛盾する理論の中で、どんどん不安をつのらせていってしまうんですね。
考えたら、あたりまえなんだよな。
この世のことは、わかっていることのほうが実はすくない。
わかってないことのほうが多いから、説が一定しないのも当然なんですわ。
なのに「どこかに正解があるのではないかしら」とか思う。
それがバカだっつうの。
こういうときにこそ、「権威ある」お医者さんという立場のひとが、
健康なんか気にすんなや。
そのまえに、人生楽しめって。
と言ってくれたら、すごく助かる。目が覚める。
よくわかってないことが多いこの世の中で、はっきりとわかっていることがあります。
それは、
気にしたら負け
っていうこと。
でも、じゃあどうしたら、気にしなくてすむの?
それは残念ながら、だあれも知りません。
お医者さんでも、学者さんでも、お坊さんでも、親でも、わかりません。
みんな言うことがちがうからね、まだほんとうにはわかってない。
3000年以上前から、人類はこの謎を解こうと必死なんだ。
だから、助け合うんでしょうね。
気にしてしまう人には、気にするな、って「じょうずに」言ってあげることが必要だ。
そのひとつが、この本だと思います。