以前ぼくは、このブログで「呼吸法なんか効かない」と書いていました。
パニック障害や自律神経失調症を治そうと思い、それには呼吸法が良いのだという話を聞いたので、ヨガ教室にも通ってまじめに取り組みました。
でも全然良くならないどころか、呼吸法を行うとむしろ悪化することも多かった。
呼吸法をすると過呼吸のようになってしまうんです。
この原因についてはみんないい加減なことを言うのですよ。
過呼吸になるのは胸式呼吸になって、浅い呼吸になってしまっているからだ、と。
すなわち、呼吸法のやりかたが間違っているんだ、と。
うそつけ。
胸式呼吸になったら過呼吸になるんじゃないんですよね。
呼吸に「合ってる」も「間違ってる」も、あるもんか。
呼吸法で過呼吸になる原因は、呼吸に集中しすぎて息苦しさが目立ってしまうんからなんですよね。
呼吸呼吸呼吸呼吸、ものすごく意識をすると、緊張してしまいます。
すると神経も過敏になってきて、ほんのちょっとの息苦しさでも、ものすごく苦しいような錯覚を覚えてしまうのです。
そこで本能的に必死で吸おう、吸おうとしてしまって呼吸回数が多くなり、過呼吸のようになってしまうんだと思います。
だから「呼吸法をやるとリラックスする」のではなくて、「呼吸法をするためには、あるていどリラックスしておかなくちゃいけない」ということなのかもしれないです。
ギンギンに緊張した状態では呼吸法はかえって緊張を助長してしまい、体調を悪化させることにもなりかねないのでした。
だから呼吸法が効かない、ということも誤っていて、呼吸法は効くのです。
しかし呼吸法が効くためには、あるていどのリラックス状態でなくてはならない、という条件がある。
これに気がついたのは、坐禅をするようになってからです。
坐禅を続けていくと、かなりラックスできるようになってきます。
いろんな心配事がふっとんで、「問題は解決していないが、とにかく今だけはリラックスできている」という状態が、けっこうよく出るようになります。
そんな状態で呼吸法をすると、ほんとにマジで「効く」のです。
呼吸法は効く、それはやっぱり、ウソじゃなかったのです。
でも呼吸法が効くためには、あるていどリラックスしておかなくてはいけない、ということなのでした。
じぶんのブログを読み返していて、面白いことに気がつきました。
坐禅をするようになって……というか正確には呼吸が長くなってきてから、ぼくの文章が変わってきているのです。
読点(、)が少なくなってきている。
かつての文章では、非常に「、」が多かったのです。
もしかすると呼吸の状態と文章の状態には、何らかの関係性があるのかもしれません。
そこでその視点からいろんな人のメールなどを読んでみたら、やはりそのとおりでした。
パニックとか自律神経失調症とかウツなど、神経・メンタル系の不具合のある人の文章は、たしかに「、」とか「スペース」が多いのです。
「文章を区切る」というのが、おそらく「息を吸う」というリズムと関係しているのかもしれません。
神経的な問題を抱えているひとは、おおむね呼吸が浅いのだそうです。
呼吸の浅いひとが切れ切れに言葉をしゃべるように、呼吸の浅い人の文章には「句切り」が多くなってくるのかもしれません。
それはさておき、リラックスのためには「腹式呼吸が良い」といわれます。
これもたしかに、そのとおりだと思うのです。
そして呼吸は吐くほうが大事で、できるだけ長く吐くようにしたほうがいい。
これもたしかに、そのとおりなのです。
しかし残念ながら、これも一概にそうともいえないようです。
「そもそも肺活量がすくない」という状態だと、腹式呼吸でも息を吐くのでも、あまり効果がなかったり、場合によっては過呼吸を誘発してしまう場合がある。
呼吸法を行うためにはある程度リラックス状態でなければならないのと同時に、「基本的な呼吸力」も必要なのな、ということがわかりました。
長年浅い呼吸で生活していると、呼吸力が低減してしまうのです。
まずはこれを突破しなくては、腹式だの丹田だのやったところで、あまり効果が見込めない。
そこで、呼吸力を高めるのにはヨガでいう「完全呼吸」が最も合理的なのではないか、と感じています。
姿勢が悪く猫背ぎみになっていると案外「おなかで呼吸」じたいは、できていたりします。
でもじつは「横隔膜」があまり動いていないのです。
姿勢の悪さで内臓が下垂し下腹部が前に出ているために、浅い呼吸でもおなかの動きが大きく見えるので「いっぱい呼吸ができている」ような錯覚を覚えるのでした。
おなかじたいは動いていても、横隔膜とか肋骨が全然動いていなかったりします。
いわゆる「呼吸関連筋群」を活性化させる必要があるのだと思います。
それには結局どのような呼吸法もあまり効果はなくて、ヨガでいう「完全呼吸」の方法しか道はないように思います。
・おなか(腸のあたり)をふくらませて息を吸い、
・つぎにおなか(胃のあたり)をふくらませて息を吸い、
・つぎにみぞおち〜胸あやりをふくらませて息を吸い、
・つぎに胸の上部〜背中あたりふくらませて息を吸い、
・つぎに肩のあたりをふくらませて息を吸い、
・最後にノドのあたりをふくらませて息を吸い、
・上をむいうてあたまの天辺まで息を送り込み、
・下を向き、顎を胸にくっつけるように下を向き息を止め、
・肛門と下腹部を緊張させて横隔膜を引き上げ、
・7秒間呼吸停止。
・前を向き、のど、肩、むね、おなか・・・と、徐々に空気を抜いていく。
……を3〜4回ほど繰り返すと、肺活量が多くなっていくのを感じます。
呼吸停止状態をヨガでは「クンバカ」といいますが、場合によってはこの状態の時、肋骨や背骨、鎖骨などが「メキメキメキ!バキっ!」などと音を立てることがあります。
胸郭や腹腔が、伸びていっているのかもしれません。
完全呼吸法をやっていると、「呼吸の入らない箇所」というのが見えてきます。
ぼくのばあいは、みぞおちあたりです。
このあたりに呼吸を送り込むのがとてもむずかしく、あきらかに何かが突っ張って邪魔をしています。
長年背中を丸めた姿勢で仕事をしてきたので、そのあたりの筋肉が萎縮・硬化しているのだと思います。
なかなか伸びてくれませんが、毎日やっていると徐々に軟化してきているようです。
胴体各部の呼吸関連筋群がよく伸びてくると「人間とはこんなにも大量に空気が吸えるものなのか」と、ちょっとした驚きさえ感じます。
そしてそうなってくると自然と呼吸も長くなってきて、文章の「、」も、いつしか減っていくのでした。
呼吸法にさえも「基礎力」が必要だった。
このことは、ヨガ教室でもあまり明確には教えてくれないのですよね。
基礎呼吸力のアップには、いまのところ「完全呼吸法」が、もっとも合理的のように感じています。