やっぱりだいぶ元気になってきたんでしょうね。
「料理しようかな」
と思うようになりました。
もともとはけっこう料理好きだったんですけど、2月に体調を崩して以来、ほとんど料理しなくなりました。
最近、両親も娘もいなくて土日は家で一人ということが多いんですね。
そうなってくると、メシなんてもうなんでもいいや、という気になってきます。
だからインスタントとか残りものばっかり食ってる。
今日も昼は何食うかな・・・と冷蔵庫を漁っていると、ソバの乾麺が出てきました。
けっこう暑くなってきたし「ざるそば」という案が浮かんだのです。
しかし、ただの盛りそばというのも味気ない。
そこで「かきあげ」を作ってみようと思ったんです。
もともと料理は好きなんだけど、もっぱら「炒めもの」ばかりの私でございます。
とくに揚げ物なんていうのは、ほとんどしたことがありません。
べつに健康とかを気遣ってではなくて、気が小さいからなんですね。
ナベに天ぷら油をドクドクと注いでいるうちに、だんだんオソロシクなってくる。
「ああ……油をこんなに大量に使ってしまって、だいじょうぶだろうか」
なんたる蕩尽、なんたる贅沢!
炒めものならせいぜい油を大さじ1とかだから、贅沢をしてる気分にはなりません。
でも、揚げ物はなあ。
まるで湯水のごとく油を鍋に注いでいるうちに、誰かが走ってきて背後から「コラー!」とかいって怒られるんじゃないか、とビクビクしてしまう。
でもそんなことあるわけないから、やってみよう。
ていうか、ほんとに何もなかったんですよね。そのまま食えるものが。
どうせ野菜炒めをつくるのなら、かき揚げをつくってみるのもいいかもしれない。
ソバと合うし。
天ぷらって、マジ難しいですね。
りくつはわかってるんです。
天ぷら液はできるだけ冷やしておくこと、油は180度ぐらい。
つい、ばかなことを考えてしまったんです。
最近別件で「重曹」にハマってて、家のカーペットがすげえ臭いから、寝る前に重曹撒き散らして翌朝に掃除機で吸い取ったら、ほぼ完全に臭いが消えたんです。
「重曹すげえ!」
感動して、卵焼きとかにも入れたりしてました。ふわっふわになるんですよね。
トリ肉とかにまぶしておいたら肉が柔らかくなったりして、重曹って万能だなあ。
「天ぷら液に重曹いれたら衣が大きくなっていいんじゃないか」
そんなことを考えてしまったんです。
さっそく重曹と卵と小麦粉と水をまぜて、天ぷら液をつくりました。
で、揚げてみると……
アカーン! むちゃくちゃデカくなっていく!
鍋からあふれんばかりになって、「深海より突如ニャルラトホテプが急浮上」みたいになってしまいました。
鍋から飛び出してきそうです。
やばい! どどどどどどど、どうしようどうしよう!
病気じゃない方のパニックになるよね。
すぐに揚げて皿にだすと、ソフトボールぐらいの玉になってました。
でもすぐに、しぼんでいく。
パンパンに膨れてしまったのがしぼんだので、カリカリサクサクとは程遠い、もっちりフワフワのかき揚げになってしまいました。
まずくはないけど、うーん、残念な感じ。
あれだ、かき揚げには重曹入れちゃダメだったんだね。
入れるとしても、もっと少ない量じゃないといけなかったのかもしれない。
卵焼きとかパンケーキなら重曹はいいんでしょうけど、天ぷらにはすこし、不向きなのかなあ。
ほんとに、世の中のおかあさんて、エラいよね。
お料理は週1回だけです、とかなら楽しいかもしれないけど、毎日こんなことやってんだなあ。いや毎回料理失敗っしてるって意味じゃなくて、毎日献立考えて、悩んでるっていうほうね。
専業主婦のひとは自律神経失調症になりやすい、っていう話がありますよね。
あたりまえじゃないのかなあ。
いや、料理じたいが、そんなに難しいってわけじゃないんですよね。
問題は「ずっと毎日である」っていうところですね。
いくら料理が好きで得意なひとでも、家で毎日毎日料理するって、こりゃストレスたまるわ。
コックさんが仕事で料理するのとは、種類がちがうんですよね。そういうことじゃないんだ。
まず献立考えるのが、ストレスですね。
栄養バランスも考えないといけないし、できるだけ安く上げないといけないし、おいしくなくちゃいけない。
ぼくみたいにたまに料理して、原価に糸目つけず時間と手間かけて凝ってやる料理とは、意味がちがうんですね。
バランスよく、経済的に、健康的に。
原則、これを全部網羅して、延々と延々と毎日毎日やるんですね。
ややこしいのが、難しいことは難しいけれど「平和の中にある難しさ」なんですね。
会社でやる仕事とか、レストランのコックさんみたいに「戦闘状態の中にある困難」とは、種類がちがうんです。
和中の難。これって、想像以上にストレスフルなんですね。
こりゃあ、自律神経イワすわ。
なのに、ガキや亭主ときたら、
「塩味足らねえな」
とか
「おれ、これ嫌いなんだよな」
とか、わがまま言い出す。
で、「今日なに食べる?」と聞けば、「なんでもいいよ」とか言う。
なんでもいいよ、は、答えじゃねえっつうの!
とつぜんディスコミュニケーションしてんじゃねえぞ!
ほら、ちゃんとこっち見て、目を合わせて、しっかり考えろや!
こっちは答えが欲しいんじゃないの! 相談してんの!
でもって、「おいしい?」と聞けば、何食わせたって「おいしい」とか言う。
おいてめえ、機械か! コルタナか?
わかるんだよ!
「せっかく作ってくれているんだから、まずくても美味しいというのが礼儀だ」とか思ってやがんの。
「わがまま言うのもアレだし、なんでもいいよ、って言ったほうが自由に作れて楽なんじゃないかな」とか思ってやがんの。
コラー! そういうことじゃないだろ!
そんなんだから、おまえは仕事できなくていつまでも給料上がらねーんだバッキャロー!
体面取り繕って表面だけサササと流さんと、どんなことでも、もっと突っ込んで考えろや!
思考と反応に手を抜くな! まじめに対峙せんか!
……っていうことを、ぐっと飲み込んでいるんだろうな毎日。ケンカになるから。
これはこれで、キツいしごとだなあー。
そりゃあ自律神経イワすわ。
とまあ、こんなふうに怒ってしまうひとはたぶん「まじめな主婦」なんでしょうね。
できるだけ健康によくて、おいしくて、経済的で、能率的なことをずっと考えてる。
愛情があるんだね。
家族のことをまじめに考えるほどに、ストレスは溜まっていく。
「なんでもいいや」とかいうダンナには、魚肉ソーセージにマヨネーズかけたもんでも食わせとけや。
あれが嫌い、これが嫌い言うクソガキには、じゃあ食わなくていいよでほっとけばいいんだ。メシ抜いたれ。
腹減ったら食うよ。なんでも。ガキなんだから。
っていうことができる主婦は、きっと神経を壊さないと思う。
まじめって、損ですね。
……なんだこの話!