ぼくの半分は、柔道でできている。
先日このことに気がついたんですけど、ではもう半分は、なんだろう。
コンピューターかもしれない。
柔道は、10年していました。
そしてコンピューターを扱う仕事も、10年しています。
生来、影響を受けやすい体質ではあると思うんですね。
じぶんにあまり軸がないというか、決定的な価値観がないというか、ぼやっとしているところがある。
だから付き合う相手にかなり影響を受けてしまうところがあります。
元気で溌剌とした人と付き合っていれば、ぼくもそのようになり、気が弱く理屈っぽい人と付き合っていれば、そのようになっていく。
自分でもわかっているので、そうならないように注意はしているものの、なかなか抵抗できないところがあります。
柔道をしていたころは、周囲には豪放磊落な人が多かったのです。
体育会の人っていうのは基本陽気でいい加減でノリで生きてる、みたいなところが若干あります。
不真面目だ、っていうことではなくて、競技に関してはくそまじめで、ストイックです。
まじめで、ストイックで、豪放磊落。
そんな感じのひとが多い。
実際、ぼくも柔道をしていたころは、けっこうそういう傾向がありました。
練習はまじめにやるけれど、それ以外のことはわりといい加減、みたいな。
派手好きで陽気な彼女と付き合えば、そのようになっていましたし、気が弱く神経質で臆病な彼女と付き合えば、そのようになっていくところもありました。
付き合う相手によって、こっちの性格までけっこう変わってくるんですよね。
この主体性のなさに我ながら辟易することろもあるんですが、わりとどうしようもないところもある。
さてこの「相手」は、案外人間に限ったことではないな、とも思ったんですよね。
もちろん人間がいちばんわかりやすく影響を受けるんだけど、モノなんかにもまあまあ影響を受けているのかもしれない。
ぼくはこの10年間、コンピューターを激しく使う仕事をしています。
そしてそれ以降、どうも性格が少しづつ変わってきていることに気がついたのです。
もともとは非常にいい加減で、テキトーな感じで、うまいこと手を抜いて生きていくみたいな、楽天お気楽やろうのところがありました。
しかしコンピューターを激しく使うようになっていらい、だんだん神経質になっていっているようなのです。
コンピューターというのは優秀だけど、「かたぶつ」なのですよね。
有能ではあるが、神経質で融通が効かず、あたまが堅く、想像力に乏しく、積極性がなく、だけど繊細。
命令がなければ動けないですから、自主性というのもありません。
しかし記憶力や計算能力はばつぐんで、たいへん器用でもあります。
まあ、あたりまえですけどね。
「機械」ですから。
コンピューターに長年深く接することで、ぼくのこころも若干「機械」のようになっているな、と思うんです。
ものごとを理屈で考えるくせがついてしまって、理屈で解決できないことはない、ぐらいに思うようになっていたりします。
理屈でしか考えられないから理論的でないことがだんだん苦手になっていって、そのうち忌み嫌うようにもなっていったんですよね。
で、考え方が、かたい。
イレギュラーに弱い。視野が狭い。
突発的なエラーがあると、パニックを起こしてフリーズすることもある。
「ゼロとイチ」じゃないけど、なんだか物事に白黒つけないと気持ち悪くなったり。
認知がどんどん二元論的になっていって、理想主義的になっていって、「清濁併せのむ」的なファジーな感じがどこかに消え失せてしまっています。
間違う、遅れるということに、異常に神経質になったりもしていっています。
もちろん、機械を使うひとが全員そうなるということではないと思います。
ただし「影響を受けやすい人」は、コンピューターと長期間付き合っていると多少コンピューターのような特性を持ち始めるんじゃないか。
「モノの魂」という考え方もあるんだそうです。
これはわりと伝統的な考え方かもしれなくて、だからこそ「いいものを使え」と言われるそうです。
安物を日常的に使っていると、そのモノの魂の影響を受けて人間まで安っぽくなっていく、っていう。
科学的な視点からいえばそんなの「うそこけ」ですけど、ぼくはなんとなくそういうのもあるような気がします。
モノにはモノの、魂や意識というものが、があるような。
性格を変えるには「付き合う相手を変える」というのも良いらしいです。
なんだかんだいって、人は人から影響を受けていますからね。
朱に交われば赤くなる。
だからもしかすると「付き合うモノ」を変えることでも、性格は多少変わるのかもしれませんね。
あたまでっかちの、融通が効かない、原理主義で、パニックになりやすい、腰は重いくせにこころは安定してなくて、まちがいを許せない、かたぶつ。
案外「コンピューターの魂」の影響を受けたりしていてね。
なんか、仕事以外は「べつのやつ」と付き合ってみよう。
コンピューターと「真逆」のようなやつが、いいね。
たとえば、なんだろう。
デンキとか使わなくて、情報とか知識とかには無縁で、理屈とかはあんまり通らなくて、柔軟で、おおらかで、命令とかなくても勝手にじぶんで動くやつで、力強くて、多元的で、豪快なやつ。
……あ、それが「自然」か。