まあなんだかなんだいって、結局戦争とかにはならないんだろうな。
などとヘラヘラしていたことを反省している。
ロシアがまさか本当に軍事行動に出るとは思っても見なかった。
どうしてロシアはウクライナに侵攻したのだろう。
恥ずかしながら今更になって調べてみて、やっと概要がつかめてきたような気がする。
ようするにロシアはウクライナがヨーロッパ(NATO)に近づいていくことが許せないということのようである。
ではなぜウクライナがNATOと仲良くするのをロシアが嫌がるかというと、ちょうど国境線にあたるウクライナが実質的にヨーロッパの一部になってしまうと、軍事的にとても怖いということのようである。
歴史的にはソ連崩壊後からNATOはじわじわと東側に境界を拡張してきていて、NATOを一種の「国」と見るならば、ロシアにとっては「こっちに侵攻してきている」ように見える。
ロシアはNATOに「こっち来んな」とざんざん言い続けていたのだけれども、それでもNATOはぐんぐん近づいてきて、とうとう「レッドライン」ともいえるウクライナまで近づいてきた。
で、しまいにウクライナ自身がNATOに入りたいとか言い出したのである。
じつはウクライナはロシアとの境界線でいざこざがあって、NATOの条項で紛争を抱えている国はNATO入りできない。
でもNATOは「門戸は開かれているからね」と言った。
つまり「いやだね。お前なんか入れてあげないもんね」とは言わず、条件が整えば(つまり紛争が解決できれば)全然入れてあげるもんね、仲良くしようね、っていう意思表示をした。
そこにアメリカも例によって「NATO入りはウクライナの主権に任せるべきだ」とか口を挟んできた。
ここに至って、ロシアは愕然としたのである。
「お、お前ら……」
さて、では「なぜウクライナがNATO入りを望むのか」というところなのであるが、じつはこれがよくわからない。
バラバラな情報から推測すると、かつてロシアがウクライナのクリミア半島(半島というか地図では島のように見えるが)を強引に奪取した「クリミア併合」という事件も関係しているのかもしれない。
おそらくウクライナの内部には「親ロシア派」「反ロシア派」があって、現在政権をとっているのが「反ロシア派」で、だからロシアの侵攻が怖い。
またウクライナの北部にはベラルーシという「ほぼロシア」な国もあって、つまりウクライナは四面楚歌(実際には二面だが)である。
だからNATOに「助けてくれよう」と懇願したのかもしれない。
ウクライナはかつてソ連の一部ではあったが公用語はロシア語ではなく「ウクライナ語」であり、さらに歴史をたどるとやはりウクライナはロシアとはまた違った文明圏であったようである。
どうやらウクライナにも「右派」がいて、彼らは「ワシらはロシアとちがうんじゃ」という観念があり、「反ロシア・親ヨーロッパ」という思想を持っているようである。
テレビとかの解説を見ていると、どうしても腑に落ちないことがある。
大学教授とかが出てきて、
「プーチン氏はロシア帝国が支配した黄金時代を取り戻そうとしている」
「プーチン氏はソ連を再建したがっている」
というようなことを真面目な顔をして言うのである。
これはつまり「ロシアは野望を持っている」という意味になる。
どうかなあ。
ぼくはプーチン氏が「野望」のような、そんなアホみたいな欲望で動いているようにはどうしても思えない。
プーチン氏が野望をもって行動していると言ったのはアメリカ大使だから、これはアメリカの解釈なのではないか?
というか、アメリカが、みんなにそう思ってほしいのではないか?
歴史的にロシアというのは「名より実を取る」国民性があるのだそうである。
つまり合理的で、結果至上主義、能力主義である。
ドイツから嫁に来たエカテリーナ二世をロマノフ王朝の正式な王位に就任させたという事実があり、国民もこれを厚く支持したそうである。
血の繋がりなんかまったくない外人さんを王様にしてしまったのである。
ここには「能力があり実績を出せる人ならば血筋は関係がない」という合理性が垣間見える。
「歴史や血筋を非常に重視する文化」であれば、なんとなく「野望」とも親和性が高い気はする。
しかしロシアの合理的で質実剛健な感じがする文化の国民に支持されているプーチン氏が、「野望」のようなことで動くというのは、ちょっと理解が苦しいような気がする。
なんとなくではあるが、アメリカは「プーチン氏を悪玉にしたい」のではないのだろうか。
一説によると、アメリカのバイデン政権である民主党の票基盤には軍需産業があり、彼らは「戦争してもらわないと困る」みたいなのがあるらしい。
先般のアフガン撤退で支持率を失っているバイデン政権は「ウクライナの自主を尊重する」という大義名分をでっち上げて戦争に参加したがっているのではないかという憶測もある。
まあこれは現時点では憶測に過ぎず、ちょっと陰謀論の香りもするので、とりあえずは無視しておく。
「プーチン氏は野望で動いている」
という理解で事態を見ていると、落とし穴に落ちてしまうのではないか。
ロシアがもし軍事侵攻するとしたら、まさに「今しかない」状態だったそうである。
そのような正確精緻な行動原理を「野望に駆られた賢い悪人」が持っていると見るのは、なんか甘っちょろい気がする。
なんかもっと、数十手先を見越した何かがあるのではないか。
何年も、もしかしたら十数年も前から計画されていたことなのではないか。
それはそれで考えすぎなのかもしれないが、こと戦争に限ってはあまり楽観視しないほうが良いように思う。
戦争は楽観主義とは相性が悪い。