脚と頭はつながっている

最近禅でいう「脚下照顧」ということについて、精神論以上のことがあるのではないかと感じています。

一般には脚下照顧というのは「脚もとを見よ」ということで基本的なことをないがしろにするなとか、先のこととか夢や理想にかまけるのではなく、いま・ここ・現実をしっかり見よ、というような意味で使われます。

しかしぼくは最近、このことばはそういった精神論的なこと以外にもっと実用的な意味を含んでいるのではないかと思うようになりました。

 

現代は自律神経失調症やウツ、パニック、強迫神経症などの、いわゆる「こころの病」がとても多くなったといわれています。

ぼくの身の回りでも、なんらかの神経・精神的不調を訴えるひとがとても多い。

何より僕自身、最近こそかなりマシになってきたものの、36歳から10年以上パニック障害と自律神経失調症に悩まされ続けてきました。

こういった病の原因として「ストレス」ということがよく言われます。

ぼくは個人的に、うそつけ、と思う。

戦国時代や戦時中ならまだしも、今の日本では誰かが唐突に殺しに来るとかいう恐怖はほとんどないというのに、「現代はストレスが多い」などということが、ほんとうに言えるのだろうか。

病気になったら病院があり、どれだけ貧乏になっても餓死することはめずらしく、水がとても豊富で綺麗で、電車の中でうたたねをしても誰も殺しには来ないこの日本において「ストレス過多」などということがそんなに多発するものだろうか。

結局は「どうでもいいこと」にわざわざ精神を膠着させてそれに勝手にストレスを感じているわけで、外因よりも内因のほうが大きいのかもしれない。

人に気を使いすぎるのは、人のせいではなくて、じぶんのせいです。

 

そこで「脚・足」なのであります。

脚・足と、「あたま」には、非常に密接な関係があることに気がついた。

すなわち、脚や足がおかしいと、頭もおかしくなっていく。

精神は「頭」に関係が深く、だから多くの心の病は「あたまがおかしい」といっても差し支えないと思う。

あたまがおかしいというと、なんだかその人の尊厳を叩き落とすような罵詈雑言に聞こえるけれども、そうではない。

思考や、首から上の肉体の状態に原因があったり、または主に首から上の症状に悩まされるというのであれば、それは「あたまが狂っている」で、表現としてはとくに間違ってはいない。

 

大学生のころ、夏の短期バイトでいわゆる「ドカタ」をしたことがありました。

安全靴を履いて工事現場で働くアレです。

その現場に50代後半の年季の入ったドカタのおじさんがいて、いろいろ教えてくれました。

暑い日は半袖ではなく長袖を着たほうがかえって涼しいとか、塩をナメながらやると疲れにくいとか、水は一気に大量に飲むと汗が止まらなくなって逆に疲れる、などなど。

その中に、印象的な話がありました。

「安全靴は大きめを履け」

きゅうくつな安全靴を履いて作業をしていると「あたまに来る」というのです。

怒りが湧くとかそういう意味ではなく、まさに「あたまに不具合が出る」ということ。

めまいがしたり、息苦しくなったり、頭痛がしたり、耳鳴りがしたり動悸がしたり、のぼせて頭や顔がほてったりする。

で、ほんとうにぶっ倒れてしまう人もけっこういるのだそうです。

「とにかく、脚とアタマはつながっとるねん。脚がおかしくなったら、アタマもやられるからな。ホンマに注意せえよ」

そのときは「へー、そうなんですね」と素直に聞いてアドバイス通り大きめの安全靴を履くようにしていました。

しかしオッサンになった最近、あのおじさんの言葉をフト思い出して、はっとした。

 

・めまい

・息苦しさ

・頭痛

・耳鳴り

・動悸

・のぼせ

・頭や顔が火照る

・倒れそうになる

 

……これ全部「自律神経失調症」の症状ではないか!

 

ぼくが長年どうしても治せなかった、あの症状たち。

ヨガを5年間も真面目につづけても治らなかった、あの症状たち。

自律神経失調症というと、お医者さんもヨガもネットもまるでハンコで押したかのように、みんな同じようなことを言う。

いわく、

ストレスだー!

首や背骨のゆがみだー!

呼吸だー!

 

 

もしかして、ちがうのではないか。

いや、ちがう、ということはないだろうが、そこが根本原因ではないのではないか?

 

足・脚なのではないのか?

 

そこで、試してみた。

 

・大殿筋(お尻)

・梨状筋(お尻)

・大腰筋(股関節)

・ハムストリングス(太ももの裏)

・大腿四頭筋(太ももの前)

・外側広筋(太ももの外側)

・内転筋(太ももの内側)

・ふくらはぎ

 

このあたりを徹底的にストレッチをすることにしました。

30日間、一日たりともあやまたず、くそまじめに毎晩伸ばしつづけました。

いっぽう、いわゆるヨガにあるさまざまはアサナは行いませんでした。

何が効いたかわからなくなるから。

上半身や胴体のストレッチも行わず、ただただ、下半身や股関節のストレッチや柔軟体操をつづけていった。

 

すると、驚異的な変化があったのです。

 

・足の冷え性が治った

・血圧が下がって正常値になった

・めまいやふらつきが消えた

・肩こりが消えた

・背中の痛みが消えた

・動悸がなくなった

・息苦しさが消えた

・便通が正常になった

・呼吸が深くなった

・姿勢が良くなった

・イライラや、ソワソワが消えた

・せっかちなのが消え、気長になった

・落ち着きがでてきた

・よく眠れるようになった

・毎日機嫌がよくなった

 

・・・・・・。

 

やっぱり、あのドカタのおじさんがいうことは、本当だったのかもしれない。

ぼくは長年、アタマに起きている不具合は、アタマや首でどうにかしないといけないように思っていた。

背中の不具合の原因は、背中にあると考えていた。

腰の不具合は、腰に原因があると考えていた。

血圧はストレスや食生活、心臓が関係していると考えていた。

せっかちなのや、神経質なのは、こころや思考、性格に問題があると考えていた。

10年以上、そう考えて、そのための努力を続けてきた。

 

違ったのかもしれない。

 

そういえば、かのローゼンクロイツが率いたといわれる秘密結社・薔薇十字団に伝わるエメラルド・タブレットには、

 

下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとくなり

 

とあるそうだけれども、そういうことなのだろうか。

あるいは禅でいう「脚下照顧」ということなのだろうか。

 

ぼくは、以下のような対応を感じるのです。

 

・大殿筋(尻) = 三角筋(肩)

・梨状筋(尻) = 広背筋(背中)

・大腰筋(股関節・腰) = 胸鎖乳突筋(首)

・ハムストリングス(太もも後) = 上腕二頭筋(上腕)

・大腿四頭筋(太もも前) = 上腕三頭筋(上腕)

・外側広筋(太ももの外側) = 僧帽筋(首)〜こめかみ、あご、側頭葉の筋肉

・ふくらはぎ = 前腕屈筋群(前腕)

 

つまり、脚がなんらかの原因で血行不良・硬化・萎縮・弱体化すると、それに対応する上半身の筋肉群で同様の血行不良・硬化・萎縮・弱体化が起こる。

そして上半身でそのような問題が起こると、自律神経系の症状としてあらわれてくる、ということのようなのであります。

このことは、どの本にも書かれていないし、ヨガでも言われない。

だから間違っているかもしれないが、個人的には必ず効果が出るので、個人的には正しいといえる。

 

考えてみれば、長時間デスクワークで、それもクセで脚を組んで仕事をしてしまうことが多い。

足腰の筋肉が「弱くなって」「硬化していく」に決まっています。

そうすれば下半身への血流は確実に悪化し、血液や体液が体内で滞留することになる。

それで結果的に、「頭という末端」に影響が及んでいるのかもしれません。

まさにあのドカタのおじさんが言ったとおり、「脚と頭はつながっている」のだと思うのです。

 

「脚をすこやかに」

 

そのためにうってつけの運動が、じつは日本に古くから伝わっているようなのでした。

その名も「真向法(まっこうほう)」という。

https://makkoho.or.jp/

たった4つの運動しかなくて、だれでも平易に行える単純ストレッチで、けっこう有名らしいです。

しかしこの運動も、「ちゃんとやらないと」おそらく効果がないと思う。

長座体前屈でも、背中を曲げるのではなく骨盤からしっかりと上体を倒すようにしなければ、ハムストリングスや内転筋群の伸展や刺激にならない。

まったくの偶然だけれども、この1ヶ月間みっちりやってきたストレッチは、真向法のそれとほとんど同じでした。

 

 

ちなみに、真向法がほんとうに「効いた」場合には、強烈なダルさを感じるはずだと思います。

夜寝る前に行って朝起きたら、立ち上がれないほど脚が重く、だるく感じるようになる。

立っているととつぜんヒザが抜けて、転びそうになることもあります。

ただしこれは麻痺している感じではなく、「力を入れるタイミングが微妙にずれる」という感じです。

これはたぶん、いままで流れていなかった血液が大量に下半身に流れ込んだため強い重さを感じるということと、筋肉が弛緩してむだな力みがとれている脚の状態に神経がまだ馴染んでいないということなのではないかと思います。

そのまま動き続ければ、そのうち治っていく。

 

下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとくなり。

やはり人間は、多面体なのだと思います。

そこにある不具合は、必ずしもそこで起こっているとは限らない。

むしろ最も離れた場所に原因がある、ということもあるのかもしれませんね。

 

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