ライフログというのに目覚めてからまる2年。
コクヨの「ジブン手帳」というのがかなり秀逸で、使いやすい。
仕事のスケジュールやログだけでなく、就寝・起床時刻からその日食ったもの、やった運動、歩いた歩数、読んだ本、何から何までこれに記載してきた。
もともと三日坊主的なところはどちらかといえば少ないほうで、やると決めたらけっこう長く続くところがある。
だから2年間以上「ほんとうに」1日たりとも欠かさずにライフログを書いてきた。
小春日和の本日、散歩から帰ってきてその歩数を記載しようとしたとき、ハタとペンが止まった。
「わしゃあ、何をやっとるんじゃ」
その日一日の行動を逐一手帳に書き記していく。
最近そういうのを「ライフログ」と称して勧める人も増えたように思う。
ライフログをつけることの重要性、メリット、そういったことも、ネット上ではかまびすしい。
たしかにそういうことを続けていけば何かが変わるような気がするし、けっこうメリットもあるような気がしないではない。
しかし、である。
以下のことについては、あまり議論をされていないのである。
「その日の出来事をいちいち手帳に記録するようなヤツは、どんなヤツなのか」
……。
ぼくは、わりと全力で断言する。
異論は一切認めないというほどに、断言する。
けちくさくて、小心者の、くだらねえヤツ。
うわー、しょーもな!
あー、もうー、しょうーもな! きもちわる!
つまんね!
男のくせに、ちまちまと、なーにをやっとんじゃ!
おめえ、きんたま、どこいったんじゃ!
だから、つまり、
わしゃあ、何をやっとーるんじゃああっ!
その日一日の出来事を、ちんまい字でちょこちょこと、細大漏らさず記録する。
ああ、ああ、ああ、なんたる時間の無駄であることよ。
「ライフログにはメリットがある」
しかし現実を見てみよ。
過去の偉人たちは、ライフログなどつけていたか?
アインシュタインが「きょうの歩数」を毎日書いていたか?
ニコラ・テスラが「きょうの就寝・起床時間」を手帳に書いていたか?
坂本龍馬が、西郷隆盛が、「お風呂に入った時間」を手帳に書いていたか?
スティーブ・ジョブズが「今日食べたもの」を細大漏らさず書いていたか?
偉大なる創造性を持つ人が、イノベーターが、そんなくだらないことをしていただろうか?
2年以上ライフログをつけていって「役に立った」ことは、ただの一度もなかった。
仕事上でも、私生活でも。
何度か見返すことはあったが、そこに新しい発見もなかった。
確かにそこには「その日行ったこと」が情報としては羅列されている。
でも「もう死んでいる」。
きのうは、きのうで、もう死んでいるのである。
死骸を何度も見つめ返す、俺。
そしてライフログ手帳の未来は、白紙である。
白紙を見つめる、俺。
その俺は、なにをしているか。
「いま」ではなく、「過去」にとらわれているのである。
それも「人類の過去」のような壮大なことではない。
ちいさなちいさな「わたしの過去」なんかにとらわれているのである。
「ああ、歩数を書き忘れるところだった」
「しまった、きのうの晩飯を書くのを忘れていたぞ」
「この仕事が終わったら、その概要を手帳に記さねばなるまい」
ライフログを始めると、そういう「引っかかり」が日々多発する。
これはどういうことかというと「自分が決めた決め事に縛られている」のである。
これは天下怒涛の愚行である。
警察官が報告書を記述するのとは、意味も意義もちがうのである。
「べつになくてもいいこと」に、あたまも、時間も、手間も割いている。
そして、もっとも肝心なことで、「なくてもいいこと」のために、後悔や、緊張を強いられている。
天下怒涛の愚行である。
だから、だと思う。
ライフログをチマチマつけるような者には、創造性を感じない。
「縛る」ことは上手でも「羽ばたく」ことが苦手な人が多いように見える。
ルールを守ることは得意でも、ルールを変えることは苦手なように見える。
それはそうだ。
「自分自身の枠」を何度も見返しているうちに、その枠から出られなくなってしまうんだ。
きのうは、きのうで、もう死んだ。
死んだものを何度でも、振り返る男。
死体を後生大事に、コレクションする男。
変態め。
ライフログは、じぶんの人生を大切に生きるためにある。
しかし、じぶんの人生を大切に生きている人は、過去など振り返らぬ。
人生を大切にするということは、いまこの瞬間を全霊で生きるということである。
過去の行動分析などしている間に、「いま」がどんどん、浪費されていく。
ライフログをつけるようなしょうもない男は、金輪際、やめちまおう。
おれは明日のほうに顔を向けて、いまを生きておるのである。
きのうのことなど、知らん。
おれに必要なのは、おれを縛る「ログ」などではなかった。
思いついたことを書き記す「ただの白紙」で、十分だった。
チラチラ後ろなんか見てないで、
日記なんか書いてないで、
明日に向かって飛べ!