丹田を脱力せよ

わしゃあ、アホなんか?

わしゃあ、ダイジョウブか?

と、まあまあ真剣に疑う今日このごろなのであります。

 

いまから3年前に「身を持って」気がついたことがあるのです。

気づいたことはご丁寧にもこのブログに書いていました。

中心脱力

当時はとにかく自律神経の調子がおかしくて、とくに午前中に異様なまでのイライラ、空前絶後のソワソワが多発していました。

油断するとそのうち誰かをぶっ殺してしまうんじゃないかと思うぐらいの強烈な怒りにも満たされていました。

とくにこれといったストレスがないのにそのような状態になっていたから、ああ、わしゃあとうとう発狂してしまったのだろうかなあ、しまったなあ、と恐怖していたものでした。

しかしこの状態は、他愛のないことですんなり脱出できました。

それは「中心脱力」という方法でした。

ここでいう中心とは、武道や禅などで言われる「臍下丹田」に該当すると思われます。

ヘソの下3〜5cmぐらいのあたりの腹筋と、肛門や会陰のあたりの筋肉のチカラを一気にバサっと抜いてしまう。

そうすると、あな不思議なりや、あの烈火の如き心火逆上がシュボボボーンとしぼんでいって、イライラとかソワソワとかムカムカとかグヌヌヌとかコンチクショーメとかハッタオスゾとかナンナンジャワリャーとかの激昂系ココロがオトナシクなるのでありました。

 

じつは最近も、以前よりは断然マシなんだけどまた似たような状態になっていて、ううーん、なんだろうなあ、どうしたんだろうなあとイブカシがっておりました。

でまたいろんな呼吸法とかヨガとかやっているうちに、

「ああっ! 思い出した!」

となったわけです。

そうそう、「臍下丹田の脱力」を忘れてしまっていたんだ。

さっそく実行してみると、ホラミロ、ザマミロ、ほどなくココロは静かになっていきました。

こういうふうに、以前確実に発見していたことを「すぐ忘れる」というのが、なんかコワイんだよなあ。

ダイジョウブかなあ、ワシ。

 

さておき、3年前は「臍下丹田の力を抜くとソワソワが消える」という「事実の発見」だけで終わっていました。

そこで今回は「なんでそうなるのか」というメカニズムを内観によって探ってみました。

べつに何も難しい話ではありませんでした。

むしろ至極当然、アッタリマエ、ナンジャソラ的な話だったのです。

 

  1. 腹圧が上昇しすぎてアタマに血が昇っていた
  2. 下腹部の硬化によって息が吸えていなかった

 

あー、しょうもな。

ああー、しょうもなーー!

当たり前だろうが!

 

朝起きたとき、無意識のうちにコーモンをキュっと引き締めるクセがあったのです。

同時に会陰もキュっと硬直させ、臍下丹田にもグーっと力を込めるクセがあったのでした。

おそらくは「今から仕事だ」という緊張感によって脳に大量の血液を輸送するためにカラダが自動的に動いていたのだと思います。

マヨネーズのチューブの下の方をギュっと握ったらテッペンからブチャアと中身が飛び出すような、そんなことをぼくは毎朝やっていたのでした。

そらあ、アタマに「来る」わなあ。

そらあ、血圧上がるわなあ。

 

このような「クセ」がついたのは、おそらく「誤った知識」を得ていたからだと思います。

この際、ごまかさずハッキリ書きますが、以下のメソッドに感化されたせいでへんなクセがついた。

 

・中村天風「クンバハカ」

・肥田春充「肥田式強健術」

・「丹田呼吸法」系メソッド

 

このへんのメソッドは、いろいろ「解釈」はありますがまず要点として「丹田」という人体の中心を重要視します。

で、そこに「チカラを込めよ」というのです。

クンバハカははっきりと「コーモンに力を入れろ」と言っています(肛門括約筋を収縮させると、下腹の腹筋も収縮します)。

柔道をしていたころにこれらのメソッドに出会い、ぼくはくそまじめにその練習を繰り返していました。

 

「丹田にチカラを入れる」というメソッドは、いまだに案外大きな顔をしてそのへんをウロウロしています。

しかしこの方法論は、ぼくはとても危険だと思う。

腹筋周りは長時間緊縮させてはいけないからです。

ふつうに考えて、腹筋を収縮させたら呼吸が浅くなり、そして腹圧が上昇してアタマに血が上る

この危険な出来事を非常に合理的かつ速やかに実現させるのが上記の方法論たちで、そうすると一時的には確かに「元気」になる。

アタマに大量の血液と酸素が送り込まれるので、頭が冴えて、元気になったような錯覚を覚えるのです。

しかしこの状態を長く継続すると、自律神経に深刻なダメージを与えると思う。

ちなみに、中村天風氏は死の直前に「俺が教えたことは全部忘れろ」と弟子に言い残したそうです。

しかしいまだに「クンバハカ」は天風氏推薦のメソッドのように紹介されていて、どこかで「既得権益」が出来上がっていたのかもしれません。

 

肺の下部までしっかり空気を吸い込もうと思ったら、横隔膜を大きく下げる必要があります。

横隔膜を大きく下げたとき、腹直筋にチカラが入って硬直していたら、どうなるか。

内臓が行き場を失って、ギュウギュウに圧迫されます。

そうすると、内臓に含まれる血液などが急に「絞り出される」ことになる。

その血液は膨大な圧力で血管内を疾走します。

血圧が上昇し、アタマに大量の血液が送り込まれることになる。

いわば「強制的に怒る」「強制的に闘争状態になる」「強制的に興奮状態になる」方法だと思うのです。

ぼくは、この方法はものすごく危ないと思う。

まさに「心火逆上」だからです。

白隠禅師はパニック障害だったようで、ご自身の状態を「心火逆上し肺金焦枯」と表現しました。

そういえば座禅では、「丹田にぐっと力を込めよ」と指導する人もいます。

ぼくがパニック障害になったのは、もしかしたら「強制的興奮メソッド」をわざわざトレーニングしていたからではないか、と思ったりもします。

 

思うに、この世界には2種類の人がいます。

 

1)油断するとダラダラと怠惰になってしまう人

2)油断すると緊張し硬直していってしまう人

 

神経的な病に陥るひとの多くが(2)のタイプではないかと思います。

何かをしようとしたとき、どうしても「力み」「急ぎ」が全面に出てきて、硬直、緊張、焦燥という状態が顕現しやすい。

だから人からは「まじめで誠実で責任感が強く仕事が早く頭の回転が早い」と思われていることも多い。

なんのことはない、生来若干臆病な傾向があるので、失敗して怒られるのを恐れ、何事かを行うときに「あたまフル回転」で挑もうとするだけのことも多いのです。

「あたまフル回転」のためには脳に大量の血液が必要で、だから無意識に腹筋を硬直させて血液をアタマに逆上させている。

腹筋の硬直状態が長く続くとマトモに息が吸えなくなるため酸欠状態になり、慢性的な疲労感や、立ちくらみなどを覚えるようになる。

慢性的な酸欠なので、つねに微妙にコーフンしていて、のぼせていて、動悸があったり、冷や汗をかいたり、入眠困難になったり不眠になったりもする。

そんな(2)のひとが、「丹田にチカラを入れる」タイプのメソッドを行ったら、どうなるか?

んなもん、そのうちハッキョーしてしまうのではないかと思うのです。

そもそも腹筋を硬直させ、呼吸停止をしやすい人が、わざわざそれを強化するようなことをするのですから。

 

おそらく、この世の半数以上の人は(1)のタイプなのではないでしょうか。

あるいは、「昔」は(1)の型のヒトが多かったのではないでしょうか。

だから古いメソッドには「気合入れろ」的な指導が多い。

丹田にチカラを込めろ、呼吸を丹田に叩き込め、みたいな、高血圧型の根性論みたいなのが多い。

そりゃあ、(1)のヒトだったら、このメソッドは「良い方法」です。

そもそもほっとくとクラゲみてえにダラダラしだして、あは〜ん、うふ〜ん、もういいじゃ〜ん、テキトーで〜、ウフフ、アハハ。

やなことからは、逃げようゼ〜! 的な。

そんなグズ野郎にはビシっと「丹田にチカラ入れぇえい!!」って激を飛ばすのは、バランス的に良いのかもしれません。

 

しかしいっぽう(2)のヒトは、最初から気合が入っているというか、いつもなんとなく「キッ」となっている。

そもそも臆病だから、危機察知のために神経がビンビンで、眼光鋭く、いっぱい気を使っていて、ふだんからピリピリしているところがあるのです。

そんな「ピリつきさん」にわざわざ「丹田にチカラを入れろ!」とかやっちまったら、呼吸が狂うよなあ。

呼吸が狂うと、気が狂うのです。

 

ふつうに考えて、おなかいっぱい息を吸おうと思ったら、おなかのチカラは完全に抜けていないとできないのです。

あたりまえじゃん。

丹田とかコーモンとかを緊張させていたら、イキは止まるんです。

人体は、そういうふうに、できている。

 

(2)のヒトが、(1)のヒトになるのは、基本的には難しいと思う。

だから(2)のヒトは、「(1)のヒト用のメソッドは行わない」という行動選択が重要なんじゃないかなと思います。

 

臍下丹田や肛門などのチカラが抜けると、口や舌のチカラが抜ける。

口と舌のチカラが抜けて、おなかの力が抜けると、呼吸が楽に、深くなる。

そうすると、「食いしばり」のクセも治ってきて、歯ぎしりや「ギザギザ舌」も治ってくる。

食いしばりが治ると、目が楽になる。

肩こりがマシになる。

肩こりがマシになって、目が楽になると、片頭痛になりにくくなる。

片頭痛がましになると、三半規管が元気になって、気象病もマシになる。

 

みたいな流れを、ぼくは確実に感じます。

中心脱力、丹田脱力。

 

 

  • ぽぽんた より:

    【不安遺伝子 日本人】検索で
    いくつか 記事 読めますが。

    焦ってるのか。慌ててるのか。
    どうしても。
    日々 わちゃわちゃ してしまうんですよねえ。
    わたし も というか。

    もう ~
    こういうもんだ と
    はら すえて ?
    はら くくって ?

    いく しか ないのかなあ
    いつか
    しんで 解放 されるまで ?

    みたい な ? ˘ ˘*ゝ

    ? ばっかり だ
    ゴメンナサイ;

    • TERA より:

      確か、遺伝子っていうのはそもそも最初から「全部」あって、生活習慣とか文化的な背景に合わせて「発現」するものだと聞いたことがあります。
      その伝でいけば、日本人が歴史的に長らく不安や恐怖が多い生活を送ってきたので、それに適応するために遺伝子が発現したという可能性もあるのかなと思います。
      それにそもそも「この遺伝子があれば不安が増える」という確実な因果を実証するのは論理的に不可能だという話も聞いたことがあります。そんな実験はできない。不安という精神状態は、物理的な作用以外にも非常に多くのファクターが関与するからです。
      日本人には不安になる人が多くて、それは不安遺伝子のせいだ・・・とすれば、なんとなく筋が通っているような気がするから本当なのかなーなんて思いますけど、でも実際に世の中を見れば断然脳天気な日本人はたくさんいます。
      いっぽう不安遺伝子が少ないとされる欧米人には、神経症患者がとても多いらしいです。
      不安なんて性格だけじゃなくそのときに置かれた立場とか、体調や機嫌でも大きく変わるから、一概にはなんともいえませんね。
      少なくとも確実に言えるのは、呼吸が浅いと不安になりやすいということです。
      これは生理学的な反応で、実験でも実証されているようです。

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